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第842話
「まあな。俺はユーベルみたいなお貴族サマじゃないけど、兄弟姉妹はたくさんいたぜ」
「そうなんですか……」
そんなにたくさんいたら、上から下までの年齢差がありすぎて、兄弟というより親子みたいな関係になっていたかもしれない。
「それで、ジーク様は何番目だったんですか?」
「俺は二番目だよ。上に二つ離れた兄貴がいて、あとの十一人は全部下だ。まあ見事に世話の焼ける連中ばかりでな」
「へえ……。ジーク様の面倒見がいいのは、そういう環境で育ったからなんですね」
「そうならざるを得なかっただけさ。俺たちが面倒を見なかったら、下の連中は生きていけないしな」
「? ご両親、いたんじゃないんですか?」
「いたけど、毎日働きづめだよ。俺は平民出身だぞ。お貴族サマみたいに、毎日の食料が保証されてるわけじゃないんだ」
それもそうか。アクセルだって両親が家にいた記憶はほとんどないし。
――俺を育ててくれたの、本当に兄上だけって感じだったもんな……。
そう考えると、上の兄弟は甘える相手もいなくてちょっと可哀想だなと思う。歳が離れすぎている分、下の子に悩みを打ち明けることもできないし。
兄上も昔は大変だったんだろうな……などと考えていると、
「フレインのことなら心配いらんだろ。あいつ、今はめっちゃイキイキしてるし」
「そ、そうですか? まあ、毎日楽しく過ごせているならいいんですが」
「楽しいも何も、あなたが来る前とはまるで別人のようですよ。あなたが来る前のフレインときたら、相手をとっかえひっかえしまくって少々心配になるくらいでしたから」
「えっ……!?」
さすがに絶句した。
あの兄のことだからそれなりに経験しているんだろうと思っていたけれど、ジークやユーベルが心配になるほどだったのか? 気になるけど、あまり詳しくは聞きたくない……。
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