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第847話

 翌日。アクセルはいつもより早めに起きて、ピピと一緒に山に行った。  もちろん兄もついてきてくれたが、どうも夢見が悪かったらしく「夢の中でもあの二人に邪魔されたー」と、朝っぱらからご機嫌ナナメだった。一体どんな夢を見ていたんだか。 「ぴー♪」  山に入った途端、ピピが上機嫌に飛び跳ねた。庭を駆け回るのとはまた違った刺激があるらしく、丸い尻尾をふりふり踊らせている。 「ははは、楽しそうだなピピ。山は久しぶりだもんな」 「ぴー♪」 「今日は好きなところに行っていいぞ。俺たちはピピについて行く」 「ぴ!」  力強く鳴き、ついて来いと言わんばかりに歩き始めるピピ。張り切りすぎて罠にかからないよう、気をつけてあげないと。  兄は周囲の木々を観察しつつ、言った。 「どうせなら木材があるところに行った方がいいんじゃない? お前、庭に露天風呂作りたいんでしょ?」 「ああ、まあな。でも今日はそんなにたくさん運べないから、目を付けておくだけでもいいんだ」 「そうかい? 三本くらい担いで帰れると思ったんだけどなぁ」 「……兄上が手伝ってくれるならな」  そんなことを言いながら、アクセル達は山を散策した。  途中、加工に使えそうなヒノキがたくさん生えている場所を見つけたので、目印のロープを結びつけておいた。後日、ちゃんと道具を用意して採集しに来よう。 「ぴ……?」  不意に、ピピが耳を立てて何かに反応した。アクセルには何も聞こえなかったが、ピピには何かが聞こえたようだった。  次の瞬間、ピピは音のした方に駆け出し始めた。 「ぅえっ!? おいピピ、どこ行くんだ!? ちょっと待ってくれ!」  慌ててその後を追いかける。ピピは足が速いので、見失わないようにするだけでも大変だった。 「いやぁ、山歩きで全力疾走させられるとは思わなかったな」  と、兄が呆れたようにボヤく。 「ピピちゃんは何を見つけたんだろう? 余程気になることなのかな」 「わからないが、きっとものすごく興味を引かれるものなんだと思う」  葉っぱや小枝に引っかかりながら、ピピの何十メートルも後ろをひたすら追いかける。

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