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第853話

「うん、いいね。じゃあ明日はヒノキ伐採デートだ」 「デートというほどのことでは……。あと、丸太を運ぶための台車も用意しないと」 「それはどうにかなるんじゃないかな。何ならお前がそのまま担ぎ上げればいいんだし」 「……だから俺には、ミューみたいな馬鹿力はないんだってば」  そう言ったら、兄が上にのしかかってきた。思わずドキッとした。  妖しい笑みを浮かべ、兄がこちらの寝間着の裾をめくり上げてくる。 「しかしそうなると、今夜はあまり長引かせない方がいいのかなぁ。明日の体力がなくなったら大変だ」 「……そんな気遣いするくらいなら、最初からやらない方がいいのでは」 「それはムリ。今日はそういう気分だから」  そう言うやいなや、兄が指先で乳首をこねくり回してきた。  あまり盛り上がらないようにしよう……と思っても、兄に触れられるとすぐその気になってしまい、アクセルの身体はあっと言う間に火照って汗ばんできてしまった。  ――ああもう……これ絶対際限なくなるパターンだ……。  なるべく早く露天風呂作りたいのにな……などと考えたけれど、結局与えられる刺激には勝てなかった。  アクセルはそのまま気を失うまで兄に抱かれ続けた。 ***  ヒノキの伐採は、結局二日後になった。前日に羽目を外しすぎたせいで、腰の調子がよろしくなかったのだ。 「とまあ、これだけ集めたはいいんだが……」  台車に山積みにされた丸太を眺める。  とりあえず露天風呂の大枠だけでも作ってしまおうと思い、先に必要な分だけ伐採してきたのだ。  ただしDIY用に加工されていないので、当然丸太の状態である。これを板状に切り出さなければならない。 「加工するだけでも結構骨が折れそうだ。便利な道具でもあればいいんだが」 「そんな特殊な道具、ヴァルハラで持ってる人はいないと思うよ。ま、太刀筋矯正の修行だと思えばいいんじゃない?」 「太刀筋?」 「加工用の板って、ちゃんと直角に切り出さないといけないでしょ? 自分の思った通りに切れるのって、戦士として大事なことだよ」  なるほど、言われてみればその通りだ。木材を切り出すついでに、太刀筋矯正ができると思えばいい修行になる。

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