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第863話
――ランゴバルト様の甲冑、かなり豪華だったもんな……。
ランゴバルト本人が大柄だからか、黒い甲冑を着ていると通常より更に大柄に見える。加えて、頭には大きな羽根飾りのついた兜を被っていた。
アクセルからすると「そんな格好でよく動けるな」と呆れてしまうところだが、対戦相手のアロイスが似たような格好をしてくれているのなら、ある意味戦いやすいかもしれない。
チェイニーが感心したように言う。
「対戦相手の予習してんの? さすがアクセル、熱心だね」
「それもあるけど、今回はなるべく早く死合いを終わらせたくて。バルドル様の食事会に招待されてるんだ」
「あ、そうなのか。それじゃあほとんど怪我もできないじゃん」
「そうなんだよな……。早く終わらせても、自分が大怪我したらどのみち参加できないし」
「ははあ、それでアロイスがどんな戦い方をするか調べてるわけね。でも実力が拮抗している場合は、全くの無傷で終わらせるのって難しいんじゃないの?」
「俺もそう思うんだ……。でも、兄上に『何もしないうちから諦めるんじゃない』って叱られてしまって」
そう言ったら、チェイニーは呆れたような顔になった。
「まーたフレイン様にムチャ振りされたの? いい加減『無理なもんは無理』ってハッキリ言いなって。フレイン様だって、実力が同じくらいの人との死合いはすぐに終わらないじゃん。それどころか、戦闘不能になって終わったりしてさー」
「……まあ、そうだな」
いつぞや、兄・フレインとランゴバルトの公式死合いを観戦したのを思い出す。
ランキング二位と三位の達人同士の死合いだったので、狂戦士モードは当たり前、腕や脚が飛んでも怯まず、全身血まみれになっても斬り合い、最後はお互い致命傷を与えあって終わった。
見ている側は興奮したものの、戦闘不能になった兄とランゴバルトは、その後当たり前のように棺に運ばれてしばらく復活できなかったものだ。
実力が同じくらいだと、このようなことが起こり得る。
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