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第868話

「……やりにくいな」 「あん? どうかしたのか? 荷物が積みにくいのか?」 「あ、いや……死合いの話で。そういう話を聞いちゃうと、なんかやりにくいなと思ってな」 「そうか? オレは俄然楽しみになってきたけどな。あんたとどんな風に死合えるのか!」 「でも負けたら、目標から遠ざかっちゃうんだぞ? いいのか?」  そう言ったら、アロイスはさも不思議そうに首をかしげた。 「何言ってんだよ。一度負けたくらいで目標が遠ざかるわけねぇじゃん。その次の死合いでまた勝てばいいだけのことだろ?」 「あー……まあ、そうだけど」 「お互い全力で死合ったら、勝っても負けても恨みっこなしだ。ランク下がるって言ったって、一気に最下位になるわけでもないし……いや、最下位スタートになっても、また一から頑張るだけだけどな!」 「…………」 「ま、とにかく! オレは全力で死合いに望むから、あんたも全力で来いよな! 手を抜いたらぶっ飛ばすぞ!」  再びぐっ、と拳を突き上げて来るアロイス。  そんな彼を見ていたら余計なことを考えていた自分が恥ずかしくなってきて、アクセルはごまかすように笑った。 「ああ、わかった。お互い全力を出し切ろう」  重い荷物を全部台車に積み、「それじゃ」と別れようとしたところで、アロイスが我に返ったように叫んだ。 「って、何でオレは市街地にいるんだ? 家に戻るつもりだったのに!」 「……進んでいる方向がめちゃくちゃだったからじゃないか?」 「うおぉ、なんてこった! 真っ直ぐ進んできたはずが!」 「ええと……じゃあ、家まで台車押すの手伝おうか? また変なところに突っ込んだら大変だろ」 「いいのか? よし、じゃあアクセルは台車に乗って進む方向教えてくれ! オレが後ろから押していくからよ」 「……それって手伝いになるのかな」  こんな大荷物が乗った台車に乗ったら、それだけでまた荷物が崩れそうだし、そもそもアクセルはアロイスの家の場所を知らない。

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