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第869話

 とりあえずアロイスに家の場所を教えてもらい、進む方向を指導しながらアクセルは歩いた。  アロイスの家は山の麓と言ってもいい場所にあり、建物自体も非常にシンプルな木の小屋だった。まるで木こりの住処だ。 「よっしゃ、家に帰れたぜ! ありがとな! もうここでいいぞ」  そう言って、アロイスは台車からせっせと荷物を積み下ろし始めた。アクセルも荷下ろしを手伝いつつ、何の気なしに話を振ってみた。 「アロイスって、もともと木こりだったのか?」 「え、何で知ってるんだ? オレ、そんなことアクセルに教えたっけ?」 「いや、何となく。家の場所とか、丸太作りの家とか、それっぽいなと」 「いかにも! オレは元木こりだ。てか、うちが材木加工屋だったんだよな。だから木を切るのは得意なんだぜ? この家や台車も、オレが自分で作ったんだ!」 「えっ、そうなのか? それはすごいな……」 「だろ? 一応、市場に行けば切りっぱなしの丸太売ってるけどさ、どうも品質がイマイチなんで、必要な時は自分で山に採りに行ってるんだよ。山の麓に家があれば、伐採業も捗るだろ?」  それを聞いて、アクセルはこれ幸いとお願いしてみた。 「あっ、じゃあ……今度木材の上手な切り出し方法教えてくれないか? 俺、斬るのが下手くそなのか、どうしても垂直に切れなくて」 「おう、いいぜ! 切り出し専用の小道具貸してやるよ」 「……小道具? 斧一本で切り出してるんじゃないのか?」 「や、もちろんベテランの木こりはそれでもできるけどな。でも初心者は、小道具なしじゃムリだ。今でこそ斧一本でザクザク切り出してるけど、オレだって昔は小道具に頼って切ってたもんだぜ」 「そうなのか……」 「ちょっと待ってろよ? 今道具持ってくるから」  今度でよかったのだが、アロイスはすぐさま小屋に引っ込むと、謎の道具を複数抱えて戻ってきた。 「……? 何だこれ?」  直角になっている金属の棒……だろうか。棒というにはかなり太く、直径だけで二〇センチくらいある。長さはまちまちで、四〇センチくらいの短いものもあれば一メートル以上の長さもあった。  こんなものをどうやって使うのだろう……。

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