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第873話
アロイスが気合い十分に言い放つ。
「そんなわけで、オレの目標はランゴバルト様になったわけよ! いつかもっと強くなって、ランゴバルト様と直接対決してやるんだぜ!」
「そうか。じゃあお互い頑張ろう。ランキング七位以内を目指して、努力するぞ」
「おお! これぞライバルってヤツだな! 燃えてきたぜー!」
甲冑を側に置き、大剣で素振りを始めるアロイス。
相変わらずの馬鹿力で、アクセル自身も度肝を抜かされてしまった。
あえてそちらは見ないようにしてノコギリに集中していると、
「へえぇ……なかなか便利な道具だねぇ」
「うわっ!」
いきなり耳元で声が聞こえて、驚いて飛び上がりそうになった。
案の定、兄・フレインが背後に立っていて、アクセルは驚愕に目を見開いた。
「あ、兄上!? 何でここにいるんだ!?」
「何でって、お前がなかなか帰ってこないから散歩がてら捜しに来たんだよ」
「ええ? そんなに長いこと外出してないだろ」
「何言ってるの、もうお昼過ぎてるよ。ピピちゃんにもご飯あげなきゃ」
「えっ!? もうそんな時間だったのか!?」
ヴァルハラでは時刻を知らせる鐘みたいなものが鳴らないので、自分の感覚で時間管理しなければならない。
アクセルは何かに熱中するあまり、こうして時間を忘れてしまうことが多い。そして兄に怒られ、ピピには拗ねられるのだ。
「あっれー? もうお昼時か? 言われてみれば猛烈に腹が減ってるような気がするな」
アロイスも、何かに熱中すると時間を忘れるタイプのようだ。空腹ですら忘れていたらしい。
彼は素振りを中断し、甲冑を脇に抱えて言った。
「んじゃ、オレも昼飯にするか。アクセルは家に帰るんだろ?」
「ああ、そうなるな……」
しかし、せっかくノコギリのコツを掴みかけたのに、途中で帰ってしまうのは惜しい気がする。
アクセルは金属のガイドとノコギリを抱え、ダメ元で聞いてみた。
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