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第875話
そして死合い当日。アクセルはいつもより早起きして、軽く鍛錬してからスタジアムに向かった。
さほど緊張していたわけではないが、時折思い出したように武者震いが起きた。恐ろしいのではなく、どんな死合いになるのか想像して興奮を覚えたのだ。
――いつぞや、兄上とランゴバルト様の死合いを観戦したことがあるけど……。
何度思い出しても血が騒ぐ。ただ見ているだけでぞくぞくしてしまうほど、血沸き肉躍る死合いだった。いつか自分もあんな風に死合ってみたいと密かに思っていたものだ。
今のままでは実力的には程遠いけれど、アロイスとだったらあんな感じの死合いができるのではないか。アロイスの憧れはランゴバルトだし、こちらも兄のようになりたいと思ってずっと努力し続けている。
お互い無事では済まないかもしれないけど、きっといい死合いができるに違いない。
「お前、いつもより気合い入ってるね」
スタジアムに向かっている時、兄がにこりと微笑みかけてきた。
「例のお友達と戦えるのが楽しみで仕方ないって顔してるよ」
「そ、そんなにわかりやすいだろうか……。いや、まあ楽しみなんだけどな」
「いいことだよ。どんな死合いになるのか、お兄ちゃんも楽しみにしてるね」
「ああ、最善を尽くすよ。……それでバルドル様の食事会に行けなくなったらごめんな」
「余計なこと考えなくていいから、ちゃんと戦ってきなさい」
そう言って兄が背中を押してくれた。
「いってらっしゃい。応援してるからね」
「ああ、頑張るよ」
戦士専用と観客入場用のゲートに別れ、アクセルは少しの間控え室で待機した。
しばらくして死合いの時間になったので、盛り上がっている会場に出て行った。
向こうの出入口からは、黒塗りの甲冑を着込んだアロイスが入場してきた。甲冑に覆われていても小柄だったが、手にした大剣は身長より大きい。振りはさほど早くないものの、あれに当たったら一発でアウトだ。油断は禁物である。
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