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第877話

 ――それもそうだな……そう簡単に斬れたら甲冑の意味がない。  アロイスは動きが遅い分、頑丈な甲冑で防御力を上げている。当然、鎧の隙間を狙われることも対策済みだ。むしろ、下手に打ち込むとこちらの武器が刃こぼれして使い物にならなくなる。  さて、どうしたものか……。 「おっしゃ! 今度はこっちからいくぜ!」  ブン、と大剣を振り回し、こちらに突進してくるアロイス。  動きは目視できるレベルだが、大剣の長さと太さは驚異的だ。ちゃんと見て避けなくては……。 「とりゃ!」  アロイスが大剣を横に薙ぎ払う。アクセルはしっかりそれを見て、身体を捻って回避しようとした。  だが大剣がこちらに迫って来る瞬間、ぞわっとした悪寒のようなものが走った。 「っ……!?」  内臓の裏側から沸き起こる焦燥感。本能的な危険を覚え、アクセルはとっさに地面を蹴ってもっと大きくその場から離れた。何故かわからないが、紙一重での回避は危険だと身体が訴えてきたのだ。  すんでのところで回避し、様子を窺うためにもっと距離をとろうとした矢先、  ――えっ……!?  腹部が真横にスパッと切れた。浅かったので血が飛ぶくらいで済んだが、もう少し深かったら臓物を曝け出す羽目になっていた。  いや、それよりも何故切れた? 自分は完全に大剣を回避したはずだ。  ――攻撃が伸びた……?  そんなことあるのか? 狂戦士モードに入れば空気も一緒に武器として扱えるが、通常の状態で攻撃範囲を拡張する方法なんて聞いた事がない。  それとも、単に自分が目測を誤っただけだろうか。でもこれだけ動きが遅かったら、見間違えることはないと思うのだが……。 「アクセル、あんた勘がいいなぁ! もう少しで真っ二つにできたのによ!」  と、アロイスが大剣を抱え上げる。 「今度は外さないように気合い入れないとな!」 「っ……!?」  再びアロイスが振りかぶり、武器を勢いよく振り下ろしてくる。地面を叩き割り、割れた地面の先から衝撃波が迸った。

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