879 / 2296
第879話
――硬いけど、ここを何とか……っ!
アクセルは左の小太刀を放り出し、両手で右の小太刀を力いっぱい押し込んだ。
鎖帷子は硬いが、斬れないほど分厚くはない。力の向きを間違えなければ断ち切れるはず。太刀筋矯正で身体に覚えさせたことを、今こそ発揮しなくては……!
だが、アロイスはそう簡単に斬らせてはくれなかった。
「なんのこれしきぃッ!」
刃の食い込んだ肩は放置し、アロイスが無傷の右拳をこちらに突き出してくる。
真正面から拳が飛んで来ているのはわかったが、ここでアロイスから離れたらせっかくのチャンスが無駄になってしまう。
何が何でも腕だけは落とさなくては……と、アクセルは身体を捻りつつ更に小太刀を押し込んだ。
アロイスの拳が脇腹に当たり、凄まじい衝撃と共にボキッと嫌な音が聞こえた。どうやらあばらが数本折れてしまったみたいだ。狂戦士モードになっているので痛みは感じないものの、身体の支柱になっている骨を折られると一気にバランスがとりづらくなる。
致命的な傷であることは間違いないが、だからといって今更こんなところで引けない。
「く……おおおおお!」
アクセルは雄叫びを上げて、両手で小太刀を振り抜いた。ガリガリと硬い物が切れた手応えがあり、小太刀を振り抜いたのと同時にもう一発強烈な殴打を食らった。今度は腹部というより胸部に近かった。
「ぐっ……!」
またもやボキッと嫌な音がして、肺が潰されたように呼吸がしづらくなる。軽々と遠くまでふっ飛ばされ、勢いよく地面に叩きつけられた。受け身はとったつもりだったが、完璧に取り切れていなかったのかすぐさま起き上がることができなかった。
「っ……がはっ……」
何とか起き上がり、放り出した小太刀を拾って再度構える。
だが息苦しさは相変わらずで、呼気がぜぇぜぇと明らかに荒くなっていた。肋骨と一緒に肺の一部も損傷してしまったみたいだ。
ともだちにシェアしよう!

