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第880話
――ヤバいな……これはあまり長く保たないぞ……。
痛みは感じなくても、身体のダメージは確実に蓄積している。骨も折れて肺も損傷しているような状態で、長く戦えるはずがない。
そろそろ勝負を決めないと、こちらの敗北は必至だ。
「あーくそ! 腕一本持っていかれちまったじゃねぇか!」
アロイスが切り離された自身の腕を見て言う。
彼自身も痛みは感じていなさそうだったが、片腕だけになってしまったのでバランスが非常に取りづらそうだった。大剣を持つと余計に重心がズレ、常に身体が傾いた状態になってしまう。
もちろんアロイスなら片手でも武器を振り回せるが、あれでは振り回した遠心力に身体が耐えられないだろう。
「やっぱりあんた強ぇよ。これでもオレ、斬られないように鍛錬してきたんだぜ?」
そう言って、アロイスは自慢の大剣を投げ捨てた。着ていた甲冑や兜もある程度脱ぎ捨て、鎖帷子だけになる。これでバランスの悪さは軽減された。
彼は残った右腕でファイティングポーズをとり、挑発的に言い放った。
「よっしゃ! ここからは徒手空拳で勝負だぜ! この殴り合いを制した方が勝ちだ!」
「……ああ、望むところだ」
アクセルも小太刀を地面に突き刺し、同じくファイティングポーズをとる。
頭の片隅で「俺は武器を捨てる必要ないんじゃないか?」とチラッと思ったが、結局徒手空拳での勝負を選択した。向こうが殴り合いの勝負を所望するのなら、こちらもそれに応えてあげなくては。
「どりゃあぁ!」
アロイスがこちらに接近し、右腕で殴り掛かってくる。身軽になったせいか今までより動きも早く、腕の振りも素早かった。そのくせ怪力っぷりは健在なので、どこかに一発入っただけで骨が砕ける恐れがある。
だが、やはり片腕では重心を取りづらいらしく、腕を振り抜いた時の隙が大きかった。
「はあっ!」
アクセルは右拳を繰り出し、バランスの崩れたアロイスの頬を殴りつけた。
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