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第882話(フレイン視点)
『アクセル、アロイス両名とも戦闘不能! よって、ただいまの死合いは引き分けとします!』
怒号のような歓声が飛び交う中、フレインは一人にこやかに拍手を送った。
「お疲れ様、アクセル」
結果的に引き分けだったけど、総合的にはいい死合い内容だった。お互い全力でぶつかり合い、本気で命を削り合った。殴り合いに発展するとは思わなかったものの、あれはあれで意外性があって面白かった。
もっとも、弟まで武器を捨てる必要はなかったんじゃないかと思うけど。
――さてと……あの子は一体何時間で復活できるかな。
フレインはボックス席を離れ、オーディンの館に向かった。
ちょうど遺体回収班がアクセルの身体を運んできたところで、館の手前に並んでいる回復の速い棺に入れようとしていた。
「やあ、ご苦労様。弟の復活にはどのくらいかかりそうかな?」
「外傷はさほどではありませんが、内部がかなり損傷しているので見た目よりは時間がかかるかと」
「あー……内部ね。骨とかだいぶ折れてたみたいだけど」
「骨もそうですが、肺と心臓が破裂していますので」
「……え、そこまでひどいの?」
「はい。なので、少なくとも丸一日はかかると思います」
遺体回収班から遺体を預かった係の男が、慣れた動作で次々棺の中に放り込んでいく。
蓋が閉まる直前、弟の死体をチラッと見たら、口元に吐血の跡が残ったままだった。せめて顔くらい拭いてあげればよかったかなと思う。
――しかし、胸部を殴るだけで肺と心臓を破裂させられるなんてねぇ……。
あのアロイスって子、相当な馬鹿力だなと感心した。
あばらが折れるのはよくあることだけど、内臓までまとめて損傷させられたなんて話はあまり聞いたことがない。弟より小柄なくせにあんな重そうな甲冑着て、その上で身の丈サイズの大剣をぶんぶん振り回せていたのだから、かなりの怪力であることはわかったが。
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