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第883話(フレイン視点)
ちなみにアロイスは、左腕を肩から切断され、首の骨を折られた状態で死んでいた。弟の拳が顎にクリーンヒットしたようで、頸椎の裏側が変な方向に曲がっていた。
首の骨折は致命傷だけど、それだけならアロイスの方が復活は早いかもしれない。彼は弟のように内臓まで破裂しているわけではないし。
――まあいいや、さっさと家に帰ろう。
どのみち、弟は明日になるまで起きてこない。ピピも家で留守番している。今日は弟の代わりにピピの面倒を見て、明日の朝に弟を迎えに行こう。
そんなことを考えつつ、フレインは寄り道せずに家に戻った。帰った途端ピピがすっ飛んできたが、アクセルがいないことに気付くと不思議そうに首をかしげてきた。
「ごめんね、ピピちゃん、アクセル頑張ったんだけど、死合いで戦闘不能になっちゃったんだよ。今は棺で寝てるから、帰ってくるのは明日になりそうなんだ」
「ぴ……」
「代わりにアクセルより美味しいスープ作ってあげるからね。ちょっと待っててね」
フレインは自分の昼食を作るのと一緒に、肉や野菜を切り刻んで大鍋で大量に煮込んだ。弟は野菜多めに煮込んでいたけれど、肉を多めにした方が絶対に出汁が出て美味しいと思う。ピピは雑食だし、たまには肉も食べたいだろう。
時々鍋の状態を確認しつつ、ひたすらじっくり煮込んでいると、テーブルの上に置きっぱなしだったバルドルの手紙が目についた。そう言えば、今日は食事会の日だっけ。
――うーん……結局行けなくなってしまったなぁ……。
自分だけでも行けばよかったのかもしれないけど、弟がいない状態で自分だけ挨拶に行ってもあまり意味がない気がする。バルドルはアクセルの顔を見たがっていたのだし。
まあ、日を改めて再度訪問すればいいか……と考え、もう一度ザザッと手紙に目を通してみた。
「……ありゃ?」
食事会の日付とカレンダーを照らし合わせ、曜日を確認してみる。なんか一日ズレているような……と思ったら、やはり一日ズレていたようだ。
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