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第885話(フレイン視点)

 食事をしながら、「ふーん?」と耳を傾けているピピ。戦いにはあまり興味がないのか、話半分で聞き流している感じだ。 「あと、太刀筋矯正も頑張ってるみたいだよ。ピピちゃんの新しい小屋や露天風呂を作るんだって張り切ってる。この間もお友達から太刀筋矯正に使える道具を借りてきたみたいだし。食事会が終わったらDIYを始めると思うよ。楽しみにしててね」 「ぴー♪」 「……さて、私はどうしよう。明日まで特にやることないんだよね」  空っぽになった食事の皿を見て、やれやれと腰を上げる。キッチンで皿洗いをしていたら、うっすらした空しさがこみ上げてきた。  自分の食事を自分で用意することほど、面倒な仕事はないと思う。そしてやり甲斐がない。自分一人だとつい「適当でいいか」などと思ってしまい、調理せずに食べられる干し肉とパンを齧って終わりにしてしまう。  今はピピがいるので料理しないわけにもいかないけど、かつてアクセルがいなかった頃の自分は食事を疎かにしがちで、訓練中によく倒れていたものだ。もちろん、今はそんなことなくなったけれど。  ――やっぱり私には、あの子がいないとダメみたいだ。  密かに苦笑し、フレインは洗った皿を乾かして食器棚にしまった。  その後、ふとあることに思い至り、寝室のクローゼットを開いて持っている衣装を確認する。  食事会に招待されたはいいけれど、ドレスコードはどうなっているのだろう。バルドルのことだからあまりうるさくは言わないだろうけど、あまり変なものを着ていったら他の出席者に嘲笑されてしまうかもしれない。眷属(エインヘリヤル)と違って、アースガルズの神々はそういう身だしなみにこだわる者も多いのだ。  ――あー……やっぱり、ロクな服がない。  一瞬、いつも着ている戦闘用の衣装で行こうかなと思ったが、それも何となく場違い感が拭えない。  仕方なくフレインは、最後の手段とばかりにユーベルの屋敷にお邪魔しに行った。

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