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第887話(フレイン視点)
するとユーベルは、微笑みながら言った。
「あなた達兄弟を見ていると、周りが全て滅んで最後の二人だけになっても、毎日楽しく暮らしていけそうですよね。友人なんて必要ないといいますか」
「いやいや、そんなことないよ。たまには一緒にお茶をしてくれる友達だって必要さ」
「まあ、食事会のコーディネートをしてくれる便利な友人は持っていて損はないでしょうけど」
サラッと嫌みを口にしつつ、ユーベルが続ける。
「まあとにかく、時折ほんの少し羨ましく感じます。わたくしには、そうまでして一緒にいたい相手はいませんのでね」
「今からでも見つければいいんじゃない? 誰かいい人はいないの?」
「思いつきませんね。物好きな貴族は大勢いましたが、わたくしはそういった方たちとは縁がなかったもので」
「その割には、綺麗どころを集めて『ユーベル歌劇団』なんてのを設立してるけど? あれは性癖じゃないのかい?」
「むさ苦しい男だらけの社会に、ほんの少しのオアシスを作っただけですよ。何せヴァルハラにいる戦士は、優雅さも教養もない粗暴な輩が多いですから」
確かに、優雅で教養あるお貴族サマの目には、腕っ節だけの連中はつまらなく映るのかもしれない。
ユーベルはたくさんの衣装の中から、白と黒のジャケットを手に取った。そして白いジャケットをこちらの胸元に当てつつ、言った。
「あなたも弟くんも元はいいんですから、うちの歌劇団に入ればもっと洗練されると思うんですけどねぇ」
「嫌だよ。きみの歌劇団、よくわからない踊りとかお茶利きとかやらされるんだろう? そんなの私には必要ないもの」
「そう言うと思いました。やる気のない者を誘ったりはしませんが、もし弟くんが興味を示したらすぐわたくしのところに来るよう言ってくださいね」
「大丈夫、アクセルもきっと興味ないよ」
そう笑って答えたら、ユーベルに白と黒のジャケットを押しつけられた。白い方は丈が長めで尻が半分くらい隠れるデザインになっているが、黒い方は逆に短くて腰の辺りまでしか丈がない。
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