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第889話(フレイン視点)
その後は特にやることもなかったので、夕食の買い出しついでに市場をぶらついた。
そこでたまたまジークに遭遇したので、これ幸いととっ捕まえて自宅に連れ込んだ。
当のジークはものすごく嫌そうな顔をして、
「勘弁してくれよ。弟くんに恨まれちまう」
「イチャイチャしなければ大丈夫だよ。一緒に夕飯を食べるだけなんだから問題ないって」
「……それもちょっと恨まれそうだけどな。明日には帰ってくるんだから、一日くらい我慢しろよ」
ただでさえ俺は元彼だと思われてるんだから、と口を尖らせる。
ジークの危惧もわからんでもなく、フレインは少し苦笑した。
――あの子、変なところで潔癖だからなぁ。
元彼だろうが何だろうが、今は普通の友人なんだから気にしなくていいのに、と思う。そんなこと言い出したら、昔にちょっとでもつき合った人とは二度と食事できなくなってしまうではないか。
だけどアクセルはどうしてもジークの存在が気になってしまうらしく、二人きりでいるとあまりいい顔をしないのだ。
「まあ、そこはアクセルの気にしすぎだよ。やましい気持ちはゼロなんだから、後ろめたく思う必要もないさ」
「……。お前さんがそういうならいいけど、弟くんにブチ切れられて兄弟喧嘩に発展したとしても俺は慰めてやらないからな」
ちょっとあり得そうだな……と思ったけれど、フレインはかまわずジークと夕食をとることにした。弟だって友人と食事することくらいあるんだから、こっちがそこまで気を遣ってやる必要はない。
買ってきた食材を適当に選び、ピピの野菜スープと一緒に自分たちの夕食も作る。久々にガッツリした肉を食べたくて、厚めに牛肉を切って鉄板で焼いてみた。外はこんがり、中はレア状態に焼けて大いに満足である。
「そう言えばお前さん、バルドル様の食事会に参加するんだっけ?」
「そうだよ。それがどうかした?」
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