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第890話(フレイン~アクセル視点)
「いや、どうせアースガルズに行くなら玉鋼でも取ってきてくれねぇかなと。あっちの鉱石は質がいいから、武器の手入れに最適なんだ」
「ああ、なるほどね。わかった、集めてくるよ」
玉鋼なら自分にとっても必要である。弟の武器修理にも使えるし、せっかくだから大量に採集してこよう。弟と玉鋼探しをするのも楽しそうだし。
そんなことを考えつつ、フレインはジークと向き合って食事をした。一人で食事をするより時間が経つのが早く、食器の片付けをして食後の紅茶を飲んでいたらあっと言う間に寝る時間になっていた。
もちろんジークは「俺は帰るぜ」と言って家に帰ったが、フレインは気になることがあって一度オーディンの館に行ってみた。弟が復活するのに、あとどれくらいかかるのか知りたかったのだ。
――えっと……アクセルの棺はどれだっけ?
確か手前に並んでるこの辺り……と、フレインは閉まっている棺を眺めた。
この棺は、中に入っている人が完全復活するまで外からは開かないようになっている。かと言って「あと○分で蘇生完了」みたいな表示も出ないため、具体的にどのくらい時間がかかるのかもわからない。
けれど、その隣にある棺――対戦相手だったアロイスはもう復活しているから、翌朝にはアクセルも目覚めるはずだ。少しホッとした。
「起きたら早く帰ってくるんだよ。食事会の衣装も着ないといけないからね」
そう小声で棺に呼びかけ、フレインは家に戻った。
***
翌日、アクセルはごく自然と目を覚ました。目覚めはスッキリそのもので、身体にも特に違和感は残っていなかった。
「ん……」
棺の蓋を開け、ぐぐっ……と伸びをして朝陽を浴びる。死合いで死んでから、復活まで丸一日かかってしまったようだ。アロイスの拳を胸部に受け、肺と心臓にダメージを受けたところまでは記憶にあるものの、結果がどうなったかはよく覚えていない。
――敗北か……よくて引き分けだろうな。
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