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第891話

 小さく溜息をつき、館を離れる。頑張って戦ったつもりだけど、なかなか思うように勝てないものだ。もっと修行して強くならなくては。  ランニングがてら家まで戻り、早速庭で鍛錬しようと思ったら、兄がすっ飛んできた。白ベースのジャケットと、インナーに黒地のシャツを着ている。見馴れないおしゃれな格好をしているので何事かと思った。 「あーおかえり。早速だけど、これに着替えてくれる?」 「? 何事だ? パーティーにでも参加するのか?」 「何言ってるの。今日はバルドル様の食事会の日でしょ。のんびりしてたら遅刻しちゃう」 「??? 食事会は昨日だったはずでは?」 「それが、手紙を読み返したら曜日が一日ズレていることが判明したんだ。正しくは水曜日じゃなくて木曜日だった」 「えっ、そうなのか? それを早く言ってくれよ」  それじゃあ鍛錬なんてしている場合じゃない。急いで着替えて出掛けなくては。  渡されたシャツに袖を通し、セットのズボンを穿き、ジャケットを羽織る。初めて着る服なのに色合いやデザインが自分によく合い、身体にもぴったりフィットした。 「ところで、この衣装どうしたんだ? 新しく買ったのか?」 「いや、ユーベルにもらったんだよ。最初は借りるつもりだったんだけど、気前よくプレゼントしてくれちゃって」 「そうなのか。さすがユーベル様というか何というか」 「こういうことに関しては、ユーベルの右に出る者はいないからね。コーディネートまで考えてくれて、助かっちゃったよ」  まあ彼の場合は、人に衣装着せるのが趣味って面もあるけど……と笑う兄。何にせよ、復活してすぐに衣装が用意されているのはありがたかった。  服を着こなし、洗面所でおかしなところはないかチェックしていると、洗濯籠が山盛りになっているのを見つけた。この間洗濯したつもりだったのに、もういっぱいになってしまっている。  食事会終わったらまとめて洗濯しないとなぁ……などと考えていると、兄の愛用しているハンカチが血まみれ状態で突っ込まれているのを発見した。

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