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第894話
ここまでハッキリ言ってやっても、兄にはあまり通じていないようだった。
それどころか、開き直ったかのようにこんなことを言い出した。
「……お前が怒ってるのはわかったけど、お前の気持ちは理解できないから無理だと思う」
「はあっ!? 何で無理なんだよ!? 一日我慢するだけじゃないか! 一生我慢しろって言ってるわけじゃないんだぞ! 何でできないんだよ!」
「いつも待たせてばかりの人間がよく言うよ。そんなに嫌だったら死合いで勝って来ればよかったんだ」
「んなっ!? 俺のせいにするのか!?」
「お前が棺送りにならなければ、私だって友人と食事なんかしなかったんだよ。努力してるのは知ってるけど、結果が伴わなかったら意味ないでしょ」
「……!」
「それと何度も言うけど、私にはやましい気持ちは何もないからね? ジークとベッドインして一夜を過ごしたなら『浮気』と認めてあげてもいいけど、ただの食事で浮気認定されたら、今後友人とは一切食事できなくなる。お前が棺に入る度に、私はいつも一人ぼっちで過ごさなきゃならないの? 冗談じゃないよ」
「そういうことを言ってるんじゃ……!」
「自宅で料理したのだって、ピピちゃんの夕食を作る用事があったからついでに料理しただけ。それで何でそこまで文句言われなきゃいけないの。お前はさっきから全面的に私が悪いみたいに言ってるけど、棺送りになったお前にだって責任はあると思うね」
「っ……!」
開き直るだけでは飽き足らず、責任をこちらに転嫁してくる兄。
これにはさすがに我慢できず、年甲斐もなくブチ切れてしまった。
「もう最低だ! 兄上がそんなわからず屋だなんて思わなかった!」
「私だって、お前がそこまで石頭とは思わなかったよ。そんな風に育てた覚えはないのに」
「育ててくれなんて頼んだ覚えはない! 兄上なんか大嫌いだ!」
沸騰した頭で、アクセルは家を飛び出した。そのまま全力ダッシュで世界樹 まで行き、入口を通ってバルドルの住むアースガルズに向かった。
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