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第895話
勢いのまま屋敷の前まで行き、懐かしい扉の前に立つ。食事会が行われるためか、今日は扉が開け放たれていた。
アクセルは扉の一歩手前から、屋敷内に向かって呼びかけた。
「バルドル様、こんにちは!」
「……おや? その声はアクセル?」
客人と談笑していたバルドルが、こちらに気付いて振り向いた。金髪碧眼の美しい男性が、顔を綻ばせて近づいてくる。
「わあ、本当にアクセルなのかい? すっごい久しぶりだね。ラグナロク以来かな」
「ええ、その節はお世話になりました。復活の際もあれこれ力を貸してくださったみたいで……ご挨拶が遅れて申し訳ないです」
「いやいや、元気そうで何よりだよ。また会えてよかった」
「バルドル様こそ、お元気そうでよかったです。ホズ様も今日はこちらに?」
「うん、もちろんいるよ。……おーい、ホズ! こっちにおいで」
バルドルが呼びかけたら、部屋の奥にいたホズが駆け寄ってきた。この素早い身のこなしは相変わらずである。
「兄上、何か……ってお前、アクセルか?」
「お久しぶりです、ホズ様。お元気でしたか?」
「……ほう、お前はそんな姿をしていたのか。悪くないな」
「えっ? そんな姿って……」
目を丸くしていると、バルドルが嬉しそうにホズの腕を掴んだ。
「実はね、ラグナロクが終わってから視力が復活したんだ。外の景色も食事のメニューも、人の顔つきも全部わかるようになったんだよ。ねー?」
「ああ。目が使えるというのはこんなに快適なのかと、改めて思ったな」
「そうなんですか。よかったですね」
目が見えなくても日常生活に支障はなさそうだったが、好きな人の姿が常に見えていた方が嬉しいだろう。視力が回復してよかった。
「それとね、私たち一緒に暮らすことにしたの。ラグナロクのおかげで掟もいろいろ変わったから、以前よりだいぶ自由になったんだ。これからはずっと一緒にいられるよ」
「本当ですか? おめでとうございます」
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