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第910話

「ええと……それで、玉鋼探し自体は許可していただけますか?」 「好きにしろ。ただし、ここはヴァルハラではない。死んだところで復活はできないし、助けてくれる仲間もいない。それだけは肝に銘じておけ」 「は、はい……わかりました。ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げ、アクセルは兄の元に戻った。 「兄上、許可をもらってきたぞ。バルドル様が見当たらなかったんで、ホズ様に許可してもらった」 「そっか。ご苦労様」 「でも、同時に忠告ももらったぞ。危険な場所だから命の保障はないぞって。地下に潜れば潜るほど良質な玉鋼が手に入るが、油断したら死ぬぞって」 「へえ、そうなんだ。というか、こっちの玉鋼って地下に潜ってとるんだっけ? 山登りじゃないんだ?」 「……それに関しても、少しは勉強してから来いと叱られたよ。それで、どうする? 本当に行くのか?」 「もちろん行くよ。良質な玉鋼が手に入るチャンスだもん。もしかしたら他の鉱石もゲットできるかもしれない」 「は、はあ。だがここはヴァルハラじゃないから、死んだところで復活はできないって……」 「だから、危なくなったら引き返せばいいじゃない。そこまで深入りするつもりはないし。それに万が一どっちかが死んでも、死体を持ち帰って棺に入れれば元通りさ」  ……それはそうなのだが、そんな気楽な考えで大丈夫だろうか。兄は強いから余程のことがない限り死なないだろうけど、自分は兄程の実力派ないし……。 「……お前、不安だったら留守番しててもかまわないよ?」  何かを察したように、兄が言う。 「玉鋼探しなんて、命を懸けるようなものじゃない。私たちはあくまで戦士(エインヘリヤル)だからね。命を懸ける舞台は、公式の死合いだけでいいんだ」 「兄上……」 「だから、本当に無理しなくていいんだよ。ある程度集まったらすぐ帰るつもりだし、お前は家に戻って夕食の準備でも……」

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