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第942話

 ――それもこれも、全部兄上のせいだ……!  兄がやりたい放題に自分を開発したのが悪いのだ。自分は別に、好きでこんな身体になったわけじゃない。こんな風になるとわかっていたら、ここまでやりたい放題させるつもりはなかった。  ……まあ、そんなことを言ったところで今更手遅れなのだが。 「はあ……もう」  ヤケクソ気味に、アクセルは頭からザバーッとお湯を被った。それを何度か繰り返しているうちに、体液で汚れていた身体が徐々にさっぱりしてきた。身体がさっぱりしてくると、気分も少しさっぱりする。  冷静になりながら身体を洗い、今後のタスクを整理する。ええと、兄にやられる前は何をやろうとしてたんだっけ……?  ――ああ、そうだ……玉鋼をゲットしたから、それでノコギリを強化してこようと思ったんだ……。  ノコギリの切れ味をアップさせ、ヒノキを切り出し、庭に新しいピピの小屋と露天風呂を作る。当初の目的はそれだった。遠い昔のことのようで、すっかり忘れていた。  ――さすがに今から鍛冶屋に行くわけにはいかないからな……。明日ノコギリと玉鋼持って行ってくるか。  そんなことを考えつつ、もう一度身体をお湯で洗い流した。  ようやく全身が綺麗になったので、風呂場を出て脱衣所で身体を拭いていると、 「あ、やっと出た」 「うわぁ!」  待ち構えていたように兄がやってきて、飛び上がりそうになった。目の前で堂々と服を脱ぎ、洗濯籠に放り込んでいく。 「あ、兄上!? 入ってくるなって言ったじゃないか!」 「風呂場には入ってないでしょ。私だって早く身体綺麗にしたかったんだよ」 「それは……」 「お前が汚したところ、ちゃんと掃除しておいたし。ちゃんと一人で後片付けして、お兄ちゃんすごく偉いよね」 「え、えー……はい、ありがとうございます……」 「じゃあお前、私が入っている間に夕飯でも作っておいて。今日はお肉の気分だから、ガッツリしたステーキで頼むよ」  ポン、と肩を叩き、兄はそのまま風呂場に入っていった。

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