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第945話
そう言われると耳が痛い。こっちは毎日真面目に鍛錬しているのに、未だに兄の実力に追いつけていないのが現状だ。正直悔しいと思うこともあるが、敵わないのは事実だから仕方がない。
「……兄上とは、才能からして違うのかな」
ついそんなことを呟いてしまう。
ハードな訓練をしなくても強いのは、きっと兄が天才レベルの戦士だからだろう。生まれ持っての才能が違うから、アクセルのように毎日あくせく訓練しなくても強さをキープできるのだ。
――ヴァルハラでランキング一桁になってるってことは、そういうことなんだろうな……。
これでも、ヴァルハラに集められた戦士たちは粒ぞろいの猛者ばかりである。
そんな中で上位ランカーとして抜きん出ている連中は、きっと化け物レベルの天才なのだろう。実際、ランキング一位のミューなんて文字通り化け物みたいだし。
一人で落ち込んでいると、兄が呆れた口調で言った。
「何言ってるの。お前にだってちゃんと才能あるよ。そうでなかったら、ヴァルハラに来てないって」
「でも……俺、いくら頑張っても兄上に近付けている気がしないし……」
「お前、時々急にネガティブモードに入るよね。お前は毎日頑張ってるし、確実に強くなってる。そんなに落ち込む必要もないと思うんだけどな」
「だけど、兄上みたいな上位ランカーは俺みたいに毎日必死で鍛錬に打ち込んでるわけじゃないだろ? 割とみんな自由気ままに過ごしてるじゃないか。その差は何なんだ?」
「年季の差じゃない? 見た目は劣化しないけど、上位ランカーはみんなヴァルハラに来て何十年も経ってる連中ばかりなんだよ。それだけ長いこといれば、強くもなりますって」
「……そんなものなのかな」
「そんなものでしょ。というか、何十年もヴァルハラにいるような戦士が、二、三年かそこらの新人戦士に負けてたら、それはそれで立場がないというか」
そう言われれば、納得できなくもないが……。
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