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第948話
一度家に戻り、兄に事の顛末を説明する。
「……というわけで、すぐには錬成できないみたいなんだ。何日くらいかかると思う?」
「何日もかからないでしょ。あの店主、その日に来た仕事はその日のうちに終わらせるのがモットーだし」
「え? そうなのか?」
「そうだよ。お前はよく棺送りになるから自覚してなかったかもだけど、お前が棺から出て来る頃には、折れた武器もちゃんと元通りになってるでしょ。毎日たくさんの武器が運び込まれてくるのに、それを翌日に繰り越しなんてやってたら永遠に仕事が終わらなくなっちゃう」
「それもそうか……。じゃあ、俺のノコギリも明日とりに行けばいいんだな?」
「いいと思うよ。……で、今日はどうする? ヒマだからデートでもする?」
ニヤニヤしながら兄が近づいてくるので、アクセルは慌てて距離をとった。
「い、いや、今日は加工用の木材を仕入れに行くから! アロイスに頼んで木材を分けてもらうんだ!」
「ええ、そうなの? じゃあお兄ちゃんも一緒に……」
「いや、結構だ! 俺一人で大丈夫! じゃあ行ってくる!」
逃げるように家を飛び出すと、近くで大型の台車を借りてアロイスの家まで行った。
彼は元きこりだから、木材の切り出しはピカイチである。事前に約束してはいないけど、アロイスだったら快く「よっしゃ! じゃあ一緒に採りに行くか!」と言ってくれそうだ。
「アロイス、いるか?」
山の麓の小屋の前で声をかけたら、中から「うおおぉぉぉ!」という謎の雄叫びが聞こえてきた。
……一体何をしているんだ?
「あの……アロイス?」
ドアを薄く開けて中を覗き込んだら、アロイスがものすごく太い丸太を五本くらい担いだままスクワットをしていた。
だがさすがのアロイスも極太の丸太五本はキツかったらしく、腕と太ももがぷるぷるして今にも潰れそうになっている。
「な……なんのこれしきぃぃ……!」
「アロイス!」
アクセルは慌てて駆け出した。そして丸太に押し潰される寸前、アロイスを素早く救出した。支えを失くした丸太は、ドーンという重い音を響かせて床に転がった。
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