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第949話
――あ、危なかった……。
こんな丸太の下敷きになったら、アクセル一人では到底持ち上げられない。というか、何故一気に丸太を五本も担いでスクワットしようと思ったのか。馬鹿力なのは知っていたけれど、さすがにむちゃくちゃすぎないか。
だが当のアロイスはケロッとした顔でこちらの肩を叩いてきた。
「おー、アクセルじゃねぇか! 何でこんなとこにいるんだ?」
「いや、木材の切り出しを手伝ってもらおうと……。そんなことより、いくらなんでもこの丸太五本はムチャだろ。今の自分の限界くらい把握しておかないと、何回棺に入っても足りないぞ?」
そう忠告したのだが、それでもアロイスは「ガハハ」と笑ってこう言った。
「いやー、この間は四本イケたから五本もイケるかと思ってさー。今度は軽めの五本で再チャレンジだな! 燃えてきたぜぇ!」
「……そうか。死なない程度に頑張ってくれ」
止めても無駄そうなので、これ以上は何も言わないでおいた。
――店主といいアロイスといい、職人系の人は一度熱中すると我を忘れてしまう傾向が強いな……。
少々呆れたが、アクセルは気を取り直して言った。
「ところで、うちの庭に新しいうさぎ小屋と露天風呂を作りたいんだが、木材の切り出しを手伝ってくれないだろうか。あと、どういう木材がいいかのアドバイスも欲しい」
「おう、そんなのお安い御用だぜ! 元木こりのアロイスさんに任せとけ!」
そう言ってアロイスは、早速家の外に出て裏手に回った。そこには木こりに必要な材料――斧やノコギリの他に、ある程度の木材サンプルも置かれていた。
「庭に作るってことは雨風に晒されても大丈夫な素材がいいんだよな。……あ、露天風呂だったらお湯も張ることになるのか。だったらやっぱりヒノキかなー。東洋ではよく風呂にも使われてるって聞くしよ」
「そうか。うさぎ小屋と露天風呂だったら、どのくらいのヒノキが必要になる?」
「大きさにもよるけど、予備も含めて七本くらいあれば大丈夫じゃね? 何ならオレが全部切り出しといてやろうか?」
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