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第950話

 あっさりとそう言われ、アクセルは目を丸くした。  そりゃあ木材を切り出してくれればこちらは非常に助かるが、さすがにそれは甘えすぎな気も……。 「いや、それは俺もやるよ。俺の家の話なんだし」 「そうか? でもアクセル、木材切るの下手くそじゃなかったっけ? せっかくの木材を無駄にする方がもったいないと思うんだけどな」 「う……」 「ま、自分でやりたいってならオレは木材だけ提供することにするぜ! 何日かかるか知らんけど、頑張って全部切り出すんだぞ!」 「……すいません、手伝ってください」  恥を忍んで、アクセルはアロイスに頼み込んだ。  自分が木材を切り出すのが下手くそなのは事実である。太刀筋矯正がまだ完璧でないこともわかっている。残念だが、頼れるところは頼らせてもらおう。  ――後で何かお礼をすればいいよな……。  そう思い直し、アロイス自作の台車をゴロゴロ転がしながら、早速ヒノキを集めに山に入った。  アロイスはよく木を採りに山登りをするようで、どこにどの種類の木が生えているかをざっくりと把握しているみたいだった。アクセルなんかは、全部同じ木にしか見えないからよく見分けがつくなと感心してしまう。 「よっしゃ! この辺にすっか!」  そう言って台車を止めた途端、アロイスは持ってきた斧で使えそうなヒノキをバッサバッサ切り始めた。アクセルが一本切り出す間に、彼は一気に五本も切り出してしまって、あっと言う間に必要な本数が集まってしまった。本当に、アロイスに手伝ってもらってよかった……。  ――というか、これじゃ手伝うどころかほとんど丸投げしたようなものだけど……。  台車にヒノキを積み、そのままゴロゴロと山を下る。  だが、来る時のようにすんなりとはいかず、途中ヒノキが他の木に引っ掛かったり台車の車輪が穴に嵌まったりして、何度も足止めを食らった。アロイスの小屋に戻って来る頃には、すっかり汗だくになっていた。

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