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第951話
「ちょ、ちょっと休憩……。水分補給しよう……」
「なんだアクセル、もうヘバってるのか? オレはまだまだイケるぜ!」
と、片腕でガッツポーズをしてくるアロイス。
山を登る前とほとんど変わらない様子を見て、アクセルは逆に呆れ返ってしまった。
――体力馬鹿というか、何というか……。
自分も決して体力がないわけではないと思う。
でも周りにいる連中がどいつもこいつも化け物レベルの体力の持ち主なので、自分だけが軟弱に思えてくるのだ。兄といいアロイスといい、何でこんなに体力がもつのだろう。スタミナをキープするコツでもあるんだろうか。
「さてと、オレは木材切り出してくるぜ! 休憩したかったら休憩してていいからな!」
ほとんど休憩もなく、アロイスは一人で台車から丸太を降ろし、お得意のノコギリでギコギコ切り出し始めた。手際もよければ切り方も上手く、側で眺めていて舌を巻いてしまった。さすがは元木こりである。
アクセルも早く手伝おうと思ったのだが、ちょっと水分補給している間にアロイスは三本もの丸太を加工してしまって、ノコギリを探している間に更に一本の木を切り出してしまっていた。
ようやくアクセルが作業に加わった時には、既に残り一本というところまで終わっていた。……ここまでくると、もはや素人は手を出さない方がいいんじゃないだろうか。
「よっしゃ! 切り出し終わり! アクセル、そっちは終わったかー?」
「……すいません、まだです」
「なんだよ、一本切るのにそんなに時間かかるのか? しょうがねぇなぁ」
そう言って、結局最後の一本もアロイスがほとんど切り出してしまった。アクセルはほぼ水分補給しただけで終わった。
「あ……ありがとう……。なんか役立たずでごめん……」
「なんの! 山登りできたし、腕も動かせたし! オレにとっては適度な鍛錬になったぜ! やっぱ久しぶりに木を切ると気分がいいな!」
「そうか……。アロイスはすごいな」
「いやいや、こんなのたいしたことないって。ランゴバルト様だったら、こんなの台車使わずに運べたはずだしよ」
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