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第954話

「おうよ! さすがにケイジ様の修行場は苦労したけど、あれクリアすると劇的に足腰強くなるのな! ビフォー・アフターを示せるなら見せてやりたいくらいだぜ!」 「そ、そうか……。すごいな……俺はまだ全然だ」 「じゃ、早くクリアできるようになった方がいいな! あそこをクリアして次の修行場に行ったら、馬鹿デカい岩を押す修行があるからよ。それで練習してりゃ、そんな台車なんか簡単に動かせるようになるぜ!」 「……それはそうだろうな」  というか、あの修行場をクリアできるくらいの力量があるのなら、最初から台車を動かすので苦労はしないのではないかと思う。  ――はあ、まだまだ鍛錬が足りないな……。  自分の未熟さを痛感していると、アロイスは「あ、そうだ」と小屋に引き返してすぐに戻ってきた。 「足腰を鍛えたいなら、この道具がいいらしいぜ?」 「……? 何だこれ?」  彼が差し出してきたのは、黒いボールチェーンのような道具だった。ボールそのものはビー玉くらいの大きさで、それがいくつも連になって繋がっている。 「変な道具だな……。こんなのでどうやって足腰鍛えるんだ?」 「わからん。前に武器を修理に出した時、鍛冶屋の店主がくれたんだよなー。結局使い方わからなくて、一回も使ったことないんだけどさ」 「そんなわけのわからないものを、何でいつまでも持ってるんだよ」 「店主に返しに行こうと思うんだけど、毎回忘れちまうんだよ。オレが持ってても使わないからさ、アクセル使っていいぜ。で、使い終わったら店主に返しておいてくれ」 「あー……まあ返すのはいいけど、使い方わからなかったら使いようがないんじゃ」 「フレイン様なら知ってるんじゃね? 帰ったら聞いてみれば?」 「……わかったよ。使えそうなら使ってみる、ありがとう」  そう言ってアクセルはその道具を懐にしまい、台車を引いて家まで帰った。かなり重かったので、家に着く頃には全身汗だくになっていた。

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