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第956話*
ぎょっとして背後を振り返ったら、兄がちょっと楽しそうに例の道具を尻に近づけていた。一体何をしているのかさっぱりわからない。
「あ、兄上、何を……」
「この道具ね、お尻の中に入れて楽しむ大人の玩具なんだ。確かアナルビーズ? とか言ったかな」
「えっ!? 嘘だろ!?」
「本当だよ。というか、こんなのそれ以外使い道がないでしょ」
「で、でも元は鍛冶屋の店主がくれたものなんだぞ!? そんないかがわしい道具を貸し出しするわけが……」
「そうでもないよ? あの店主、武器の修理の他に要望に応じてこういう道具も作ったりするらしいから。セルフで発散したい人も、ヴァルハラには結構いるんだよ」
「ええっ!? そんな、セルフでなんて……」
「そりゃあ、相手がいなけりゃそうなるでしょ。私みたいに、常に可愛い弟を抱ける環境にいる人の方が稀なんだよ」
「それは……」
「それに、私だってお前がいなかった頃はある程度道具にお世話になってたし。常に相手がいるわけじゃなかったからさ」
……そんな生々しい話、聞きたくなかったのだが。
「わ、わかった! 使い方はわかったから、実践はしなくていい! 今すぐ店主に返してくる!」
そう言って手を伸ばしたのだが、兄はひょいと躱して首をかしげた。
「なんで? せっかくだから使ってみようよ、もったいない」
「もったいないって何だ!? 俺は道具を使う趣味はないぞ!?」
「でもせっかくアロイスくんが貸してくれたんだしさ。体幹鍛えることにも繋がるんだし、一回くらい試してみようよ。それで合わなかったらやめればいいんだし」
「そんな……待ってくれ兄上、やめて……っ!」
一個目のボールをぐいぐい後孔に押し付けられ、アクセルは身震いした。ビー玉くらいの大きさだったら難なく飲み込めてしまいそうで、そこがまた怖かった。
ひとつなら平気だが、これがいくつも入ってきたら俺は一体どうなってしまうんだ……?
「……んあっ!」
微かな違和感と共に、吸い込むように入口がボールを飲み込んだ。
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