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第960話*

「はっ……う……く」 「ほらほら、もう少しだよ。頑張って、お前ならできる」 「っ~~~~」  一方の兄は、煽るだけ煽って一切手を貸そうとしない。弟が目の前で苦心しているのに、本当に見ているだけだった。  理不尽な怒りがこみ上げて来て、思わず大声で罵りたくなる。  ――くっそ……兄上、覚えとけよ……!  風呂場に着いたら一発殴ってやろうと心に決め、アクセルは唇を噛み締めた。そしてよろよろと足を動かし続けた。  腹の中にボールが入っているのはもちろんだが、後孔から持ち手が生えているのもまた恥ずかしい。顔から火が出そうだ。 「うう……」  それでも何とか歩き続け、風呂場に辿り着いた。  到着した途端、脚の力が抜けてしまい、がくんと床に崩れ落ちる。  もうここまでやったんだからいいだろうと兄を見上げたら、兄は軽く手を叩いてにこやかに言った。 「うんうん、よく頑張ったね。偉い偉い。やっぱりお前はやればできる子だ」 「そ……な、いいから、早く抜い……」  言いかけて、アクセルはハッとした。自分の下肢が痛いくらいに張り詰めていることに気付いたのだ。  ――や、やばい……! 今抜かれたら、俺……!  展開が容易に想像できて、慌てて兄を制止する。 「ま、待って……! 抜かなくていい……! 自分で何とかする……!」 「何とかって何? お前、どうするつもりなの? そのままずっと中に咥えておくの?」 「それは……」 「というかお前、そんなに辛かったら私に関係なく自分で抜くこともできたはずじゃない? それでも我慢して咥え続けてたってことは、心のどこかではこの状況を楽しんでたんじゃないかな」 「そ、そんなことは……!」 「別にいいと思うけどね。お前、案外Mっ気あるし。お兄ちゃんにいじめられるの、結構好きでしょ」 「っ……!」  完全に否定しきれないところが辛い。兄に攻められると身体が勝手に反応してしまうのは事実だ。

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