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第972話

 その後具材が柔らかくなるまで煮込み、明日持って行くスープを完成させた。ピピにも少し味見してもらったが、なかなか美味しく仕上がったようだ。  作った昼食をテーブルに運び、ピピの野菜スープとフレンチトーストを庭に持って行く。 「よし、じゃあ私たちもいただこうか」  兄が椅子に腰かけたので、アクセルも当たり前のように椅子に腰掛けようとしたが、 「……うっ」  今更ながら肝心なことに気付く。自分は今ミニスカートにノーパンで、しかも腹の中には例のボールがたくさん詰まっている状態だった。これでは椅子に座るどころか、満足に食事もとれない。 「兄上……これ、やっぱり外したいんだが……」 「ええ? 夜までは頑張るって約束じゃない」 「そうだけど、これじゃ食事できないよ……」 「座るのがキツいだけでしょ? そしたらお前、そこで空気椅子してなさい」 「えっ? ずっとスクワットをキープしたまま食事しろっていうのか?」 「そうだよ。太ももの筋肉はそれで鍛えられる。何なら私も一緒にやってあげようか?」  そう言って兄は自分の椅子を外し、膝を曲げて椅子に座っているような姿勢をとった。膝はほぼ直角で姿勢もよく、本当に椅子に座っているように見える。 「ほら、お前もやってみなさい。食事の間だけだ。簡単でしょ?」 「う、うん……」  兄がやっているのに自分だけやらないわけにもいかず、アクセルは膝を曲げてスクワットのポーズを取った。  最初はさほどでもなかったが徐々に太ももに効いてきて、だんだん足腰がぷるぷるしてきた。この姿勢だと立っている時より腹部が圧迫されてしまい、ボールが中でぶつかり合って変なところに当たってしまう。それもまたキツかった。  ――や、やばい……出そう……。  ぞくっと鳥肌が立ち、とうとう耐えられなくなってアクセルは膝を伸ばした。危うく食事中にボールを漏らしてしまうところだった。

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