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第973話
大きく深呼吸していると、椅子のポーズを続けたままの兄が呆れ顔で言う。
「お前、足腰弱すぎでしょ。食事の間くらい頑張りなさいよ」
「す、すみません……でも腹が、その……」
「そこを耐えないと体幹と足腰の強化にならないって。家の中なんだから、ある程度失敗しても大丈夫だし、限界まで頑張りなさい」
……その失敗は、排泄の羞恥と隣り合わせなのだが。
俯いて立ちながら、アクセルは小さな声で言った。
「……兄上、何で今日はそんなに厳しいんだ?」
「厳しくないでしょ。これくらい普通だよ」
「そう、かな……。でも……」
使い方を実践したところまでは……まあ、いつもの悪ふざけみたいな感じで我慢できた。
でも、ぐったりしているところになおもボールチェーンを突っ込んできたり、スカート穿かせてきたり下着を脱がせてきたり、その上で空気椅子をしろと言ってきたり、ムチャ振りもいいところである。
ここまでいじめられるとだんだん悲しくなってきて、何か俺は悪いことでもしただろうか……と悩みそうになった。
すると兄はスッ……と立ち上がってこちらに近づいてきた。
そしてポンポンと頭を撫でながら言った。
「……ごめんよ、そこまで厳しくしてるつもりはなかったんだ。ただ、お前が変な道具を持って帰ってきたから、ちょっとイラッとしていたのかもしれない」
「イラッと……?」
「だってねぇ……いくら知らなかったとはいえ、そんなものを隠しもせず剥き出しのまま持って来ちゃったわけでしょ? 誰にも見られなかったからよかったけど、もし変なヤツに見られていたらお前絶対路地裏行きだったよ」
「そ、そんなことは……」
「そんなことあるんだよ。お前は無駄にモテるんだ。顔もスタイルも抜群にいいし、いつも真面目でいやらしい雰囲気は皆無。そういう人って、見ているだけでそそられるんだよね。組み敷いたらどんな顔をするのか、どんな声で鳴いてくれるのか、想像したくなるんだ。お前はその辺の自覚がなさすぎるんだよ」
「……すみません……」
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