979 / 2296

第979話*

 ――でも、この状況……。  チラリと兄に目をやる。兄は弟の痴態をじっと見つめてくるだけで、手を出そうとはしない。「絶対に触らない」という約束だけは忠実に守ってくれている。  とはいえ、ただ見られているだけなのも苦痛だった。  普段、いいようにやられている時は刺激によって視線をごまかせたが、刺激がなくなると視線がダイレクトに突き刺さってくる。自分自身に触り、後孔に手を回している姿をつぶさに見つめられる。  それで余計に恥ずかしくなり、アクセルは震えながら目を伏せた。触られていないのに肌がどんどん熱くなり、視線だけで全身を焼かれてしまうような錯覚に陥る。 「どうしたの? 手が止まってるよ」 「う……」 「ほら、もっと思いっきりやってごらん。いつもお兄ちゃんがやってあげているように、こう……手を動かして、後ろに指を入れるんだよ」 「っ……」  直接そんな風に教えられると、ますます恥ずかしくなって耳まで真っ赤になってしまった。なんだこの羞恥プレイは。これだったら足腰立たなくなるまで抱かれた方がマシだったかもしれない。 「う……んっ……」  思い切って指先に力を込め、ぐぷ……と秘蕾を押し開き、中に挿入してみる。挿入した途端、指先に柔らかな粘膜が纏わりついてきて、その隠微な感覚に背筋がぞくっとした。まだ第一関節までしか入れていないのに、温かな内襞がきゅうきゅう蠢き、自然と奥へ奥へ誘ってくる。  そうか、これが自分の中なのか。指ですらこの有様なのだから、実際に欲望を入れたら気持ちいいに違いない。兄が夢中になるのも何となく理解できる。  そうは言っても、自分でやるのと他人に挿入されるのとではまた感覚が違う。同じことをやっているのに何かこう、刺激が薄いような、物足りないような……。  試しにアクセルは、前の欲望もゆっくり扱いてみた。反応しかけていたそこは直接刺激を加えたことで、生理的な反応を見せ始める。芯が硬くなり、先端が濡れ、手の中でどくんと大きく脈打った。

ともだちにシェアしよう!