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第987話*

「本当はまだまだイケると思うんだ。お前はやればできる子だし、もうちょっと頑張ってみない?」  遺伝子を粘膜に擦りこむように、至極ゆっくりピストンを繰り返される。動かれる度に中でぐちゅ、と音がして、ぞくぞくっと背筋が甘く痺れた。 「うぅ……ふっ、く……」  危うくイきそうになり、ぐっとタオルの口枷を噛んで耐える。  言われてみれば、こういう時に音を上げるのはいつもアクセルが先だ。兄の凄まじいテクニックに流され、快感に溺れてしまい、結局ついて行けなくなってへとへとになってしまう。  やりたい放題にこちらを攻めているように見えて、何だかんだで兄は二度か三度で終わってしまうことが多かった。  回数的にはそれでも十分な気もするが、自分がイきまくっている分、どうしても兄はそれより少なくなってしまう。そう考えると、兄が満足するまで付き合ってあげられない自分が不甲斐ないとも思えてくる。  ――仕方ない……。  アクセルは真っ直ぐに兄を見上げ、覚悟を決めたように自ら腰を揺らした。鍛えた体幹を披露するように、下肢に力を込めてぎゅうっと兄を締め上げてやる。  途端、兄が色っぽい息を吐いてこちらの耳朶を軽く食んできた。 「ああ、いい……。お前、わざと私を締め付けてるね? それは私への挑戦状と受け取っていいのかな?」 「ん……」 「……ふふ、いいね。そういうの大好き。じゃあお前の心意気に免じて、口は外してあげるね。私もそろそろ、お前の喘ぎ声聞きたくなってきたし」  そう言って兄は、頭の後ろで結んでいたタオルを解いてくれた。  解放された途端、安心感から「はぁ……」と声を上げそうになり、慌てて気を引き締める。  ――ああ……結局また絆されてしまったな……。  冷静に考えればこれ以上の無理はできないとわかっているはずなのに、情に訴えられるとつい折れてしまう。たまには兄の好きなようにさせてやろう……と思ってしまう。  多分こういうところが、自分の甘さなのだろう。

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