996 / 2296
第996話
「私としては、お前を一人で留守番させておく方が心配なんだよ。万が一変な人が尋ねてきたらどうするの」
「……え。いや、さすがにそれはないんじゃ……」
「全くないとは言い切れないでしょ。郵便の当番だって毎日ポストに来るんだし。私がいない間にそういうヤツに襲われたら、お前のコンディションでちゃんと抵抗できる? 腰痛くてもちゃんと戦える?」
「それは……」
ちゃんと戦えるかと言われたら微妙なところだが、それにしたってちょっと心配しすぎなのではないだろうか。郵便当番に変な目で見られたことはないし、そもそも、そういった人以外にうちを訪ねてくる人は滅多にいない。
明日、アロイスにスープを届けに行く数分間を狙って、誰かが来るとも思えないのだが……。
「……お前、ちょっと心配しすぎとか思ってない?」
「えっ!? いや、そんなことは……。でも、そこまで心配しなくても……」
「お前の場合は、心配しすぎくらいでちょうどいいんだよ。ただでさえ『多分大丈夫だろう』みたいな感じで無意識に油断しちゃうんだから。お前はお前が思っているよりモテるんだから、気を付けなさいって言ったでしょ」
「それは聞いたけど……そんなこと言ってたら、一人でどこにも行けないんじゃ」
「だからとりあえず、明日は一緒にスープ届けに行こう。サッと行ってサッと帰ってくるだけだからさ。いいでしょ?」
「……わかったよ」
やむを得ず、アクセルは渋々承諾した。
兄が「こうする」と決めてしまった以上、自分が何を言ったところで覆らない。個人的には外に出る方が心配なのだが、なるべく急いで行って帰ってくれば大丈夫だろう……きっと。
――もし何か起きたら、兄上にフォローしてもらおう……。
そう考えつつ、アクセルは穿いたままだったスカートを脱いで洗濯籠に放り込んだ。
今更だが、こんな格好のまま風呂場でさんざんやらかしてしまったことが、かなり恥ずかしかった。次回はせめて、スカートなしにしてもらいたいところだ。
ともだちにシェアしよう!

