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第996話

「私としては、お前を一人で留守番させておく方が心配なんだよ。万が一変な人が尋ねてきたらどうするの」 「……え。いや、さすがにそれはないんじゃ……」 「全くないとは言い切れないでしょ。郵便の当番だって毎日ポストに来るんだし。私がいない間にそういうヤツに襲われたら、お前のコンディションでちゃんと抵抗できる? 腰痛くてもちゃんと戦える?」 「それは……」  ちゃんと戦えるかと言われたら微妙なところだが、それにしたってちょっと心配しすぎなのではないだろうか。郵便当番に変な目で見られたことはないし、そもそも、そういった人以外にうちを訪ねてくる人は滅多にいない。  明日、アロイスにスープを届けに行く数分間を狙って、誰かが来るとも思えないのだが……。 「……お前、ちょっと心配しすぎとか思ってない?」 「えっ!? いや、そんなことは……。でも、そこまで心配しなくても……」 「お前の場合は、心配しすぎくらいでちょうどいいんだよ。ただでさえ『多分大丈夫だろう』みたいな感じで無意識に油断しちゃうんだから。お前はお前が思っているよりモテるんだから、気を付けなさいって言ったでしょ」 「それは聞いたけど……そんなこと言ってたら、一人でどこにも行けないんじゃ」 「だからとりあえず、明日は一緒にスープ届けに行こう。サッと行ってサッと帰ってくるだけだからさ。いいでしょ?」 「……わかったよ」  やむを得ず、アクセルは渋々承諾した。  兄が「こうする」と決めてしまった以上、自分が何を言ったところで覆らない。個人的には外に出る方が心配なのだが、なるべく急いで行って帰ってくれば大丈夫だろう……きっと。  ――もし何か起きたら、兄上にフォローしてもらおう……。  そう考えつつ、アクセルは穿いたままだったスカートを脱いで洗濯籠に放り込んだ。  今更だが、こんな格好のまま風呂場でさんざんやらかしてしまったことが、かなり恥ずかしかった。次回はせめて、スカートなしにしてもらいたいところだ。

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