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第997話
縛られるのに使われたタオルも一緒に洗濯に回し、新しいタオルを用意してアクセルは言った。
「じゃあ俺は身体洗うから、兄上は出て行ってくれ」
「ええ? この状況で私だけ追い出すの? 一緒に身体洗った方が効率よくない?」
「そんなこと言って、またどさくさに紛れてあんなことやこんなことをするつもりだろ。その手には乗らないからな」
「いやいや、そんな。もう何もしないって。本当に身体を洗うだけだよ」
「兄上のそういう発言ほど、信用できないものはないと思うが」
「ホントだってばー。お前が信用してくれないなんて、お兄ちゃんは悲しいです」
……そりゃあ、数え切れないほど前科があるのだから信用できなくて当然である。
「それに、背中の方はお互い流しっ子した方が綺麗に洗えると思うんだ。というわけでお前、あっち向きなさい」
「だから一人でできるって言ってるだろ! 兄上は何もしなくていい!」
「わかった。じゃあお前が私の背中流してよ。あと髪も洗ってくれる?」
「……え? それだって兄上一人でできるじゃ……」
「いいの! 今日はお前にやってもらいたい気分なんだ。テキトーでいいから、よろしく頼むよ」
そう言って、当たり前のように椅子に座る兄。
――まあ、俺が洗う側だったら……。
このまま説得してもどうせ出て行ってくれないだろうしな……と諦め、アクセルは兄の髪を濡らしてシャンプーでわしゃわしゃと洗った。細くて綺麗な金髪が泡に包まれ、汚れが落ちていく。
――そういえば、兄上と巫女って同じ髪色してるよな……。
自分たちの母親だという予言の巫女。石碑を破壊したのと同時に消滅してしまったけれど、彼女も兄のような綺麗な金髪をしていた。
おそらく遺伝的に巫女の血を濃く受け継いでいるのは兄の方で、見た目も性格も能力も――いいか悪いかは別にして――よく似ているのだ。
逆に自分は、万が一の時のスペックとして作られたらしいので、巫女の血も兄ほど濃くはない。髪の色も金色ではなく薄めの茶色だし、性格も兄とは正反対になった。
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