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第998話

 もっとも、正反対だからこそ相性がいいのだし、見た目があまり似ていないからこそ兄も可愛がってくれている。  兄自身は自分が巫女に似ていることをあまりよく思っていないから、もし弟までもが巫女に似ていたら、ここまで育ててくれなかったかもしれない(実際、「似てないから可愛いんだよ」と言われたこともあるし)。  ただ、アクセルとしては髪の色くらいは似ていてもよかったんじゃないかと密かに思っている。あまりにも兄と似ていないと「自分たちは本当に血の繋がった兄弟なのか」と時々疑わしくなってしまい、安心できないのだ。  まあ、こんなこと口に出したら「またお前はそんなことで悩んで」と叱られてしまうのだけど……。 「お前、またネガティブなこと考えてるでしょ」 「……えっ!? いや、そんな……何でもないって」 「嘘だね。お前はすぐに顔に出るもの。自分一人でぐるぐる悩んでいる時は、特にわかりやすいんだよ。今度は何で悩んでるの?」 「いや、ホントにたいしたことじゃないんだ。兄上が聞いたら、また『くだらない』って一蹴するような内容で」 「くだらないかどうかは聞いてから判断するよ。また勝手に暴走されても困るし、お兄ちゃんに話してみなさい」  そこまで言われたら話さないわけにもいかず、仕方なくアクセルは考えていたことを話した。自分たちはどっちも巫女の息子なのに兄だけが似ていること、自分はどちらにも似ていないこと、そのせいで時々兄との血縁関係が疑わしくなってしまうこと……云々。  すると兄は、案の定呆れた顔でこう言ってきた。 「……うん、確かにくだらなかった。お前、よくそんなことでいちいち悩んでいられるね?」 「俺にとってはくだらなくないんだよ。俺、兄上と見た目も性格もほとんど似てないから、『本当に俺は兄上の弟なんだろうか』って、時々本気で悩んでしまって……」 「お前、意外と血の繋がりとか気にするよね。地上ならともかく、ヴァルハラではそんなの意味ないと思うけどな」

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