1004 / 2012

第1004話

 アクセルは感謝を込めて、丁寧に兄の背中を流した。この背中にずっと守られてきたんだな……と思うと、またちょっと涙が出そうになる。 「話が逸れたけど、そんな無責任なおばさま方の言葉なんて、あまり気にしちゃダメだよ。もうかなり昔のことだし、あの人たちは私たちのことなんて何もわかっちゃいないんだから。私はお前が毎日頑張って鍛錬してるの知ってるし、強くなるために努力してることもわかってる。なかなか結果は出ないけど、それも時間の問題だと信じてるよ。お前はお前のペースで頑張ればいいんだ」 「ああ、そうだな。すぐに強くはなれないけど、これからも鍛錬頑張るよ」 「うんうん。お兄ちゃんはいつでも応援してるよ」 「……でも、あのボールを尻に入れる訓練だけは勘弁してくれ」 「えー? あれ嫌だった? 結構体幹強くなったじゃない」 「……なったけど、さすがに毎回やるのは恥ずかしいです」  家の中とはいえ、スカートにノーパンは思った以上に恥ずかしいことがわかった。兄と一緒にいる時はいいが、一人で留守番している時に宅配便等が来たら困る。出られない。 「じゃあ、あの訓練は家に私がいる時限定にしようね。その後、丁寧にお風呂で汗流してあげるからさ」 「……いや、それもいらないから」  鍛錬後に兄と風呂なんか入ったら、また今みたいにさんざんやられまくるに決まっている。遊んでいる時の兄は本当に意地が悪いから、付き合うこっちも大変なのだ。  ……まあ、そう言いつつ我を忘れるほど気持ちよくなっているのだけれど。  兄の背中を流した後は、兄がアクセルの背中を流してくれた。  また変なところ触られるかなと思ったけれど、これ以上余計なちょっかいを出されることはなく、髪から身体まで丁寧に洗われた。子供の頃は、兄がこうやって身体を洗ってくれたよな……と思い出す。たまには子供に返って洗われるのもいいかもしれない。

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