1006 / 2012
第1006話
腰にふわふわの身体をすり寄せてくるので、アクセルは苦笑しながら答えた。
「ありがとう、ピピ。助かるよ。まったく兄上は、食欲も性欲も旺盛で困っちゃうよな」
「ぴ……」
「とりあえず、今日は無理せずマイペースに仕事するよ。無茶なことして明日一歩も歩けなくなったら困るしな」
兄がついてきてくれるとはいえ、明日はアロイスのところにスープを持って行き、鍛冶屋にノコギリを取りに行かなければならないのだ。食料の買い出しもあるし、日課の鍛錬もある。「腰が痛くて動けません」だなんて戦士 としてあるまじきことだ。
アクセルは腰に負担をかけないよう注意しながら、適当に休みつつ木材を台車から下ろした。そして長さごとに木材を分類し、明日作業しやすいように四角く並べておいた。
夕食の準備まで時間が余ったので、庭を早足でウォーキングした。本当はランニングをしたかったが、腰に響きそうだったので今日のところはやめておいた。
ピピも隣をとことこ歩きながらついてきてくれる。
「それにしても、最近の兄上はやたらと性欲が強くないか? 食事の量も生前よりだいぶ増えている気がするぞ」
「ぴ……」
「たくさん食べるのはいいことだけど、昨夜さんざんやらかしておきながら朝一番に『ステーキ食べたい』とか、どういう胃をしているんだろうな? 普通だったらそこまで食欲湧かないと思うぞ」
少なくともアクセルは、たっぷり抱かれた翌朝にがっつりステーキを食べることはできない。コーンフレークにミルクくらいで十分だ。
「今夜で肉もなくなりそうだから、また明日ごっそり買ってこないとな。……いっそ狩りで大物でも仕留められたら食費も浮くんだけど」
「アクセル、やまにいく?」
「いや、今のところ予定はないけど。ピピが行きたければ連れて行ってやるぞ」
「アクセル、かりをする。ピピ、てつだう」
「え? ピピも手伝ってくれるのか? でも大きなイノシシが出たらどうする?」
「ピピ、やっつける。いのしし、きっくする」
ガシガシと地面を蹴りつけるピピ。確かにうさぎの後ろ足は強靭だから、それで蹴とばせば結構な威力になるだろう。
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