1008 / 2012
第1008話
「……マジかよ、ったく……」
一人残されたアクセルは、腰に手を当てて呆れ返った。まさか本当に飛び出して行くとは思わなかった。
――もうすぐ食事なのに……どんだけ食い意地が張ってるんだか。
あと数分を我慢できないのか。そんなに空腹だったのか。兄の食欲はアクセルには理解できない。
仕方ないので、煮込んだシチューと一緒にパンを食べることにした。
どうせ兄は宴会場で食事してくるからいらないだろうと自分の分だけ食事をテーブルに並べていたら、宣言通り兄はすぐに帰ってきた。
「ただいまー! 前菜食べてきたよ! ご飯にしよう!」
「……えっ? 食べるのか? 宴会場で食事してきたんじゃないのか?」
「したよ。でもあれはあくまで前菜。メインディッシュじゃないからね」
「ええー……?」
「イノシシのシチューも美味しいけど、やっぱり私はお前が作ってくれたご飯が一番好きだな。なんか幸せな味がするの」
「…………」
「お前は先に座ってて。私は自分の好きな量盛ってくるよ」
そう言って兄はキッチンに入り、残っていたシチューをほとんど全部皿に盛って席についた。全部食べてしまうなら、鍋ごと持ってきてもよかったのでは……とも思う。
「うん、今日も美味しそう。いただきまーす!」
「い、いただきます……」
躊躇なくがつがつ食べ始めた兄を眺めつつ、アクセルも食事をした。
――どんだけ食べてきたのか知らないけど、本当によく食べるなぁ……。
それで当たり前のように体型を維持しているのだから、それはそれですごい気がする。アクセルがそんなに食べたら、体重が増えて鍛錬しづらくなりそうだ。
……いや、それ以前に兄と同じ量は胃に入らないのだけれど。
「アクセル」
急に兄が手を止め、神妙な面持ちになった。何かと思い、アクセルも食事の手を止めた。シチューに変なものでも入っていたのだろうか。
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