1011 / 2012
第1011話(フレイン視点)
――もし「判定」を受けて、何ヶ月も隔離なんてことになったらどうしよう……。
じっと寝ている弟を見つめる。
アクセルは大事な弟だ。素直で可愛くて、危なっかしいところだらけで、この歳になっても目が離せない。今日の昼間も、いかがわしい道具を剥き出しで持ってきてお仕置きしたばかりだ。
今も無防備な顔を曝け出したまま、完全に熟睡している。こうなってしまうと余程のことがない限り、朝まで起きない。
――そういうところも、心配の種なんだよね……。
こんな調子じゃ、夜中に暴漢が押し入ってきてもギリギリになるまで気付かないだろう。かと言って注意したところで簡単には直らないし、本人も「戸締りしてるし、大丈夫だ」と安心しきっているから、なかなか危機感が育たない。兄としては、もどかしいばかりだ。
「はぁ……心配だなぁ……」
やれやれと溜息をつく。
山で猛獣に襲われるとか、罠にハマって出られなくなるとか……そういうのならまだいい。問題はガラの悪い男どもに拉致されて輪姦されることだ。
本人はあまりわかっていないようだが、アクセルを狙っている男は想像以上に多い。今は上位ランカーの自分が側にいるから手を出してこないけど、これで自分が隔離される羽目になったらどうなるか。想像に難くない。
そういった懸念があるから、何ヶ月も離れ離れになるのは困るのだ。
でも本当に獣化してしまったらもっと困るし、治せるものなら今のうちに治してしまいたい。破魂されて弟と今生の別れになるなんてまっぴら御免だし……。
「はあ……どうしよ」
ずん……と胃が重くなってきた。判定を受ける前からあれこれ考えても仕方ないのだが、心配の種はいつまでも頭をこびりついて離れなかった。
結局フレインはあまり熟睡できないまま、朝まで浅い眠りを繰り返した。
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