1012 / 2012

第1012話

 翌朝。アクセルはいつも通り起床して、庭で軽く朝の鍛錬を行った。  思ったほど腰痛もひどくなかったので、ゆっくりした速度でランニングもできた。やはり寝る前にストレッチをしたのがよかったのかもしれない。 「ぴー♪」  鍛錬の音を聞き付けて、ピピが小屋から出てきた。すりすりと身体をすり寄せて、「おはよう」と挨拶してくる。 「おはよう、ピピ。これ終わったら朝食持ってくるから、もう少し待っててくれ」 「ぴー」 「今日はアロイスのところにスープを届けに行くけど、帰ってきたら早速露天風呂や小屋を建てるからな。ピピの小屋が新しくなるぞ。お楽しみに」 「ぴー♪」  嬉しそうに「うんうん」と頷くピピ。それを横目に見ながら、アクセルは走り込み後のストレッチをした。今ここで腰に負担をかけるとまた腰痛がぶり返しそうだったので、主に体側を伸ばしたり縮めたりした。 「そう言えば、今日は兄上、健康診断に行くんだってさ。最近食べすぎてたから急に不安になったらしい」 「……ぴ?」 「まあ、診断を受けて食生活や生活態度が改善するなら、それはそれでいいことだよな。さすがに、夕飯前に宴会場でシチューをしこたま食べてくるのはやりすぎだろ。ちょっと引いたよ」 「ぴー……」 「兄上の食生活が改善されれば、今ほど頻繁に買い出し行かなくて済むし。……あ、でも近々狩りには行くつもりだからな。その時はピピ、頼むぞ」 「…………」 「? どうした、ピピ?」  返事がないのでピピに目をやったら、ピピは不思議そうに首をかしげていた。何か考えているようだった。 「どうしたんだ? 何かわからないところでもあったか?」 「ぴ……」 「難しい話をしたつもりはないんだけどな……。俺が一方的にペラペラ喋ってるから、ピピは置いてけぼりになっちゃうのか。ごめんな」 「けんこうしんだん」 「え?」 「けんこうしんだん、てなに?」 「あ、そっちか……。健康診断っていうのは、自分の身体を調べることで……」  説明しようとして、ふとアクセルは疑問に思った。  ――あれ? ヴァルハラの健康診断って一体何をやるんだ?

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