1013 / 2012
第1013話
昨夜、寝る前に「健康診断だ」と言われた時は全く疑問に思わなかったが、よくよく考えたらおかしな話だ。
身長、体重を計る程度だったら鍛錬場でも計測可能だし、何か病気にかかっているかどうかを調べるくらいなら、一度棺に入って悪いところを全部チャラにしてきた方が早いのではないだろうか。
そもそも、オーディン様の眷属 として選ばれた時点で、身体的な健康面は問題ないと認定されたのと同意だし、今更健康診断というのもおかしな話である。
兄よりも古株の戦士はいくらでもいるが、「俺もそろそろ健康診断受けなきゃな~」なんて話は聞いたことがない。
――兄上、何か隠してる……?
そう思ったら急に気になってきて、アクセルは急いで部屋に戻った。
この時間なら兄も起きているはずだが、今日はまだベッドの中だった。
「兄上、朝だぞ。そろそろ起きてくれ。聞きたいこともあるんだ」
「んー……」
「兄上ってば! 昨日は夜更かしせずにちゃんと寝ただろ。八時間以上は寝てるんだから十分のはずだ」
「ムリ……ねむい……もうちょっと……」
「兄上!」
揺すっても叩いても、兄はなかなか起きてくれない。いつもはここまですればグズりながらも起きてくれるのに、一体どうしたんだろう。一人で勝手に夜更かししてたんだろうか。
「……ったく、しょうがないな」
朝食ができたら起きてくるかも……と思い直し、アクセルはキッチンに入って食事の準備をした。
そろそろ食料自体が切れそうなので、残った野菜と干し肉を刻み、溶き卵と合わせてオムレツを作った。こうすると嵩増しになるし、シンプルなオムレツより満足感があるのだ。
あとはトーストを焼いてコーヒーを淹れて、塩と胡椒で味付けした簡単なスープを作れば朝食は完成である。
「……おはよ」
テーブルに皿を並べていると、ようやく兄が起きてきた。まだ眠気がとれていないらしく、ボーッとしたまま目を擦っている。
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