1014 / 2012

第1014話

「おはよう、兄上。相変わらずすごい寝癖だな」 「……いつものことだよ……ふあぁ……」 「俺、直そうか? 今櫛持ってくるからそこの椅子に……」 「……いや、大丈夫……。ここまで爆発してたら、シャワー浴びちゃった方が早いと思う……」 「そうか? じゃあシャワーしてきてくれ。朝食できてるから、早めにな」 「うん……そうだね……」  大欠伸をしたまま、兄はふらふらと浴室に向かった。起きたと言ってもベッドから抜け出ただけで、全然意識がハッキリしていなかった。  ――兄上、本当に大丈夫なのか? 本当にどこか具合が悪いんじゃないだろうな?  何の病気か想像つかないけれど、少なくとも今の兄がいつもと違うのは何となくわかる。朝はなかなか起きないし、食欲は無駄に旺盛だし、性欲も――いや、これはいつものことか。  とりあえず、兄が戻ってきたら食事しながら聞いてみよう……と思い、アクセルはそのまま待つことにした。  ところが、一〇分経っても二〇分経っても兄は浴室から出てこない。早めにしてくれって言ったのに、何をしているのだろう。髪を洗うだけではないのか。 「兄上? 兄上、大丈夫か?」  心配になって外から声をかけたのだが、兄の返事は聞こえない。服は脱ぎ散らかされていたので中にはいるはずなのに、何故返事すらもしてくれないのだろう。 「兄上……」  試しにそっとドアを開けて中を覗き見たら、次の瞬間、呼吸が止まりそうになった。  中では兄が、浴室にもたれかかって倒れていたのだ。 「兄上!? 兄上、どうしたんだ!? しっかりしてくれ!」  慌てて中に入り、兄を抱き起こす。  軽く頬を叩き、身体を揺さぶり、何とか意識を取り戻そうと躍起になっていたのだが、 「兄う……」  呼びかけようとして、ふと違和感に気付いた。意識がないにしては、随分呑気な顔で目を閉じている。呼吸も安らかなものだ。  ――……って、もしかして寝てるだけ?  まさか眠気に勝てず、全裸になったまま浴室で寝てしまったのか? そんなことあるのか? シャワーすら自発的に浴びられないなんて……。

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