1015 / 2012

第1015話

「はあ……」  心配して損した……と言いたいところだが、とりあえず急病で倒れたわけではなかったのでホッとした。  ――しかしどうしたもんだか……。  起こしてもまた違うところで寝てしまいそうだし、だからといってここで寝かせておくわけにもいくまい。  やむを得ずアクセルは兄を背負い、寝室のベッドに運んだ。そしてバスローブを着せて掛け布団をかけ、そのまま寝かせておくことにした。  案の定兄は一度も目を覚ますことなく、当たり前のようにすやすや寝始めた。 「……はあ」  困ったものだ。今日はアロイスのところにスープを持って行く予定だったのに、手伝ってくれるんじゃなかったのか。  まあ、スープの大鍋に関しては借りた台車に乗せれば一人でも運べるけど、そもそも昨日「一人で行動させるのは心配だから」と言っていたのはどこのどいつなんだ。  ――でも、いくら夜更かししていても、ここまで眠くなるものなのかな……。  一睡もしていないわけじゃないんだから、起きなきゃいけない時は普通に起きられるはず。それがシャワーすら浴びられずに風呂場で寝てしまうなんて、いくらなんでもあり得ないと思う。  やはり何かの病気なんだろうか。このままずっと目覚めなかったらどうしよう。俺は一体どうすればいいんだろう……。  不安になってきたものの、ずっとベッドの側で見張っていることはできない。とりあえず自分はいつも通りの生活を送りつつ、ちょこちょこ様子を見に来よう。  そう思い直し、一人で朝食をとることにした。兄の分も作っていたので、その分が完全に余ってしまった。捨てるのももったいないし、これは今日の昼食にしよう。 「…………」  出掛ける時、もう一度兄の様子を見てみた。起きる気配はなかった。せめて夕方までには起きてくれるといいのだが……。  念のため、簡単な置手紙と飲み水を用意して枕元に置いておいた。  そしてスープの入った大鍋を台車に乗せ、アロイスの家を目指した。

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