1017 / 2012

第1017話

「美味そうじゃん。アクセル、料理上手かったんだな」 「まあ、人並み程度にはな。料理するのは兄か俺しかいなかったから、必然的に」 「へー、そうか。たくましいな。オレなんか、食材全部テキトーに切って鍋に突っ込んじまうから、いつも同じものができるぜ」 「そ、そうなのか……」  ……それだけだと、出来上がるのがスープなのかシチューなのか、それとも鍋料理なのか、どれとも判断がつかないのだが。 「よっしゃ! とにかくいただくぜ! 朝メシ、朝メシ~♪」  上機嫌のまま、鍋におたまを突っ込むアロイス。小皿も用意せず、鍋から直接食べようとしていた。  兄といいアロイスといい、食欲旺盛な人って何故鍋のまま食べたがるのだろう……。 「……ん?」  一口スープを味わったアロイスは、一瞬目を丸くしたまま固まってしまった。 「? どうしたんだ?」 「美味い! ……けど、なんか違う」 「え?」 「いやね、このスープ美味いんだけど、オレの故郷の味とはちょっと違うのよ。だからいろんな意味で驚いたっつーか」 「はあ。そう言われても、俺はアロイスの故郷の味は知らないんだよ」 「えーとだな、何かこう……もう少し酸味があって、スープもシチューみたいにドロッとしててさ。そんで、もっとたくさんの豆が煮込まれてて、味も深みがあって美味くて」 「は、はあ……」  口で説明されても、あまりよくわからないのだが。 「……わかった、今度またチャレンジしてみるよ。でも、これはこれとして取っておいてくれ。残されても困るし」 「おう、ありがとな! これはこれで美味いからさ、料理のレパートリーに加えるといいぞ!」 「はいはい……」  軽く生返事をし、アクセルは話題を変えた。 「ところでアロイスは、朝猛烈に眠くなって起きられなくなったことってあるか?」 「あん? オレはいつも朝は元気満々だぜ! アクセルはそういうことあるのかよ?」

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