1018 / 2012

第1018話

「いや……うちの兄がな。今朝なんかなかなか起きてこなくて起こしに行ったんだけど、それでもまだ眠そうにしてて。シャワー浴びに行ったかと思ったら、結局風呂場でまた寝ちゃったんだよ」 「は? 風呂場で? それ、もう寝るというより気絶じゃん」 「……だよなぁ。さすがにちょっと異常だよな……」 「フレイン様、昨日夜更かしでもしてたのか?」 「どうだろう……? 仮に夜更かししてたとしても、そこまで眠くなるのはおかしいと思うんだ。アロイス、何か心当たりはないか?」 「んなこと言われてもなぁ……。オレは気絶するほど眠くなったことないからわかんねぇよ」  確かに、アロイスは見た目からして元気満々だ。そういった眠気とは無縁に思える。 「……あ。でもひとつだけあるかも」  と、アロイスがスープを飲む手を止めた。 「オレ自身はそういう経験ないけど、ランゴバルト様がさ。十何年に一回くらい、眠くなったり腹が減ったり、ギンギンに滾っちゃったりするらしいぞ」 「ギンギンにって……」  それは……つまり、性欲のことだろう。  要するに、睡眠欲・食欲・性欲の全てが高まってしまう時期が、十何年に一度やってくるということだ。今の兄も、もしかしたらそういう時期なのかもしれない。実際、兄はヴァルハラに来て十年ちょっと経っているし。 「そうなった場合、ランゴバルト様はどうしてるんだ?」 「オレもよく知らないんだけどさ、なんかどっか別の場所に行って治してるらしいぞ。期間はその時によってまちまちだけど、帰って来る頃にはちゃんと元に戻ってるしな」 「そうなのか……」 「詳しい話は、ランゴバルト様から直接聞いたらどうだ? オレはこれ以上のことは話せないし」 「そ、そうだな……そうするか……」  ……と言ったものの、あのランゴバルトがアクセルの話をまともに聞いてくれるかは疑問である。初めての狩りで殺されかけたくらいなのだ。  それ以来、何となく敬遠していたが、兄のことを思うとビビってばかりもいられない。ここは勇気を出してランゴバルトを訪ねるしかないか……。

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