1021 / 2012
第1021話
すると、コニーは笑いながら手を振った。
「ランゴバルト様は常に己を磨き上げている方ですからね。身の回りの雑用にかかずらっている暇はないんですよ」
「そうか……。確かに、掃除や洗濯をやってくれる人がいると鍛錬だけに集中できるよな」
「はい。いつかまたトップに返り咲いてくれると、僕は信じています」
そう言えば、ミューが一位になる前はランゴバルトが一位だったとか。あの性格だとさぞ悔しがっただろうが、その悔しさをバネにより一層の鍛錬に励んでいるのだとすれば、「悔しい」という感情もそれほど悪いものではない。
――努力家なんだな、ランゴバルト様……。
自分も地道に努力していくタイプだから、努力で実力を積み重ねていくタイプは好感が持てる。……まあ、殺されかけたことを忘れてはいないけど。
「よろしければ、模擬戦を見学なさいます? 強者同士の戦いは、見ているだけでも勉強になりますよ」
「いいのか? 邪魔にならないなら、是非……」
「大丈夫ですよ。じゃあついてきてください」
コニーに案内され、アクセルはそっと闘技場に入った。
本場の死合い会場より一回り小さかったが、中の作りは本格的だった。地面や支柱がスタジアムに似せて作られており、本番さながらの鍛錬ができるようになっている。
「……!」
そんな中、ランゴバルトと誰かが模擬戦を行っていた。模擬戦と言ってもお互いに武器は本物で、当たり前に血飛沫が飛んでいる。鍛錬であっても手加減なしの真剣勝負ということだ。
一体相手は誰なのか……と視線を移したら、アクセルも知っている意外な人物だった。
「……ジーク様?」
「はい、今日のお相手はジーク様です。面識ありますか?」
「ああ、兄のも……友人だからな」
元彼、と言いそうになって慌てて友人と言い直す。
それにしても、ジークがランゴバルトの模擬戦に付き合っているのは驚きだ。あの二人にそんな接点があったのか。
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