1023 / 2012
第1023話
内心ヒヤヒヤしていたら、ランゴバルトはゆらりと動きを止めてこちらを睨みつけた。そしてブン、と勢いよく長戟を振るうと穂先を地面に向けた。
「ふん、なら今日はここまでだ」
「…………えっ?」
一瞬、耳を疑ってしまった。
あのランゴバルトが言うことを聞いて戦いをやめた? しかも、自分より下位の戦士に指示されて? いつも逆ギレして襲い掛かってくるのに?
――コニー……どんだけランゴバルト様に気に入られてるんだ……。
ランキング二位の強者を上手い具合に掌で転がしているみたいで、ちょっと恐ろしくなった。ある意味、コニーも相当な強者なのかもしれない。
「あー……結構ヤバい状況になってるな。こりゃ一度泉に行かないとダメだ」
と、ジークが切られた自分の腕に目をやる。切られたところからボタボタ血が滴っていたが、あまり痛みは感じていないようだった。狂戦士モードは継続中ということか。
「お? 弟くんじゃねぇか。こんなところで会うなんて珍しいな」
「こんにちは。いつも兄がお世話になっております」
「今日はどうした? ランゴバルトの鍛錬に誘われたわけじゃないよな?」
「ええ……ちょっとランゴバルト様にお話がありまして。というか、ジーク様とランゴバルト様って、仲が良かったんですね」
「いや、特別仲がいいってわけじゃないが、時々模擬戦には誘われるんだ。本当はミューとやりたいみたいだけどな」
「ミューとはできないんですか?」
「ほら、ミューはあの性格だろ? 模擬戦に誘ってもめんどくさがって逃げちまうんだとさ」
「ああ……確かに」
ミューの場合、「えー? ランゴバルト、しつこいから嫌だ~」とか言ってすげなく断りそうだ。彼は基本、自分が「楽しい」と思うことや興味の湧いたことでないと自発的にやらない傾向にある。
「んで? 話ってのはフレインの獣化に関してか?」
「えっ……? なんでジーク様が知ってるんですか?」
「昨日、宴会場にあいつが来た時に少し話をしたからな。あいつ、今獣化っぽい症状が出てて困ってるんだろ? 猛烈に腹が減ったり、眠くなったりとか」
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