1024 / 2012

第1024話

「え……ええ、まあ……」 「気になるようだったら、早めに検査受けて治療してきな。手遅れになったら破魂まっしぐらだ。ある程度の隔離期間は必要だが、初期段階なら当たり前に治るからさ」 「は、はい……。あの、ちなみに隔離期間ってどれくらい……?」 「そりゃ進行状況によるな。軽ければ一週間くらいで戻ってこられることもあるけど、重症だと一年以上かかることもあるぞ」 「そんなに……」  一年なんて言ったら、自分がバルドルのところに人質に出された期間と同じじゃないか。もっとも、あの時はラグナロクが起こったどさくさで半年程度しか人質にならなかったけれど、その半年の間にも兄に会いたくてたまらなくなったものだ。  獣化を治療するための隔離なんて言ったら、きっとほとんどお見舞いもできないだろうし、手紙のやり取りもできるかどうかわからない。隔離期間はずっと音信不通かと思うとちょっと心細い。  それでも、兄が破魂されるよりは全然マシだけど……。 「ま、ここであれこれ心配しててもしょうがない。まずは検査、話はそれからだ。もしかしたら単にものすごく腹が減って、ものすごく眠いだけかもしれないし」 「そうですね……わかりました。ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げ、アクセルはその場を立ち去ろうとした。一度帰って、兄に早く検査を受けるよう促さないと……と思ったのだ。 「あれ。お前さん、ランゴバルトに話があったんじゃなかったのか?」 「いえ、獣化について詳しく聞きたかっただけですから。ジーク様にお話を聞けたので、こちらとしてはもう大丈夫です」 「そうか。まあ今の段階なら、そこまで焦ることもないと思うぜ。昨日会った時は普通に振る舞ってたし、言われなきゃ症状があるなんてわからないくらいだったしな」 「そ……そうですか……」  話を聞けたのはありがたいが、昨日のことを考えると少し複雑だった。  偶然とはいえ、また自分の知らない間にジークと会っていたのかと思うと、兄に文句のひとつも言いたくなる。

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